好きなモノの話がしたい / なぜ銅の剣までしか売らないんですか?

別に触れなくて良いので、ちょっと私の好きなもののあらまし聞いていかない?っていう趣旨の記事です。(もちろん実際に見てくれると嬉しいけど時間は有限なので気になったらで良いです)

感想と違って、あまりダラダラ書きすぎないようにする(努力目標)
ネタバレはありません。

 

『なぜ銅の剣までしか売らないんですか?』(著:エフ)の話をします!

概要とあらすじ

人気YouTuberが放つ衝撃の問題作!?
ストレスだらけのドロドロ経済ファンタジー!

「魔王討伐の勇者一行が最初に立ち寄る町では、なぜ≪銅の剣≫までしか売らないのか」?

もっといい武器も防具もあるじゃないか。
なんで最初からそれを売らないんだよ……。

優秀な商人見習いとして、そのシステムに疑問を抱いてしまった青年・マル。
彼は自分の弟が、選出されたら二度と生きて帰れないとされる魔王討伐の≪勇者≫に選ばれてしまったことから、この非効率的なルールを改正しようと商人ギルドの本部に直談判すべく旅に出る。
ところが行く先々で目の当たりにしたのは、(どこか現代日本でも見かけるような)えぐい社会の構図と、それに翻弄される民の姿ばかり。
そして、長く困難な旅路の果てに、ついに到達した目的地では、衝撃的な真実を突きつけられて……!?

-amazon商品ページより引用

『なぜ勇者が旅立つ最初の町では弱い装備までしか売ってくれないのか?魔王討伐を託すなら、もっと強い装備をあらかじめ用意してやればいいのに』という、「RPGのゲームシステム的にそうなってるんだよ!」なお約束を敢えて追究していくお話です。メタフィクションというやつですね。

その物語の中に『どこかYoutuberを思わせるような職業の人々』や『なんか動物愛護団体っぽい人々』など、現代日本で見られるような概念も多数出てくる。(※RPG世界観ナイズされている)社会風刺的な作品でもあります。

そしてこの作品の支柱になっているのは『経済』。主人公の商人としての描写や社会情勢・豊かさ・戦争・宗教などに経済的観点を絡めて語られる感じですね。

RPG風ファンタジー × メタフィクション × 風刺 × 経済

ざっくり表すとこんな感じだろうか。こういう風に書くとめっちゃカタくて難しそうですが、こういう要素をエンタメ作品としてしっかり昇華してるところが面白ポイントです。風刺や経済論を垂れるだけでなく、ちゃんと物語性も担保されているので『普通に面白くてよくできてる作品が見たい』という動機で見ても十分楽しめる作品だと思います。

 

発表媒体

書籍(単行本/kindle)が発売中、動画(Youtube/ニコニコ動画)でも本編が公開中。
動画は作者自身が作成しているもので、ゆっくり音声+ドット絵などのビジュアル演出つきで全編無料で視聴することができます。

無料ですし、書籍版で不足していた描写にセルフ加筆されている部分もありますし、オススメはやはり動画版ですね。音声付きなので作業用BGMにもしやすい!

再生リスト

全14話、おおよそ4時間半程度で視聴できます。だいたいアニメ1クール分くらいかな?

 

書籍で発売している小説を全編動画化して無料公開という、ちょっと珍しい発表形態ですね。作者によると収益などでしっかりプラスを出せているとのことです。

 

作者について

F(エフ)さん
肩書きについて、キャッチーな言い方をすればYoutuber・言い方を変えるとキャリアコンサルタント、やっていることはゴリゴリのクリエイター……という、まあ色々複合的なスキルを活かして活動している方です。

2016年にニコニコ動画とYoutubeで『ゆっくり霊夢はFランク大学の就職課に就職したようです』シリーズを投稿開始。『Fラン大学就職チャンネル』という根も葉もないタイトルのチャンネルを継続して運用し、現在は登録者数34万人にまで達している人です。すごいな、34万人。

まあパっと見死ぬほどチープでうさんくさいんですが。中身はかなり骨太です。ほんとだよ!

就活に関する知識や企業・経済や社会についての情報などなどを発信するチャンネル。…なんですが、単純な解説動画ではなく、いらすとややフリー素材+ゆっくりボイスを用いた物語仕立てにすることでエンタメとしても成立しているところがすごい。

ず~~っと欠かさず週2で投稿続けてるのもすごい。ただ、キャッチーな物語に落とし込みつつマジで現実の話をしているので人は選びます。就職チャンネルなのでね…。キツい人は本当にキツいと思う。私はエンタメとして楽しみつつ、たまに土手っ腹を刺されて死んでいます。

 

そういう、『キャリアコンサルや経済・社会に関する知識と、創作性をかけ合わせる才能を持った作者』の作った長編が『なぜ銅』なんですね。
こういう経歴・目的・発表媒体での創作活動、めっちゃ令和って感じがする。面白いよね

 

『なぜ銅』おもな登場人物

そんなFさん普段の動画はいらすとやがメインなんですが、『なぜ銅』については商業発表作なこともありしっかり固有のキャラデザが用意されています。物語性の強い長編なのでキャラ性やバックグラウンドについても普段のいらすとや動画より骨太ですね。

ぶっちゃけ「これオタクも好きだろ」ってキャラや設定がかなり出てくる。兄弟・血の繋がらない親子・人間と人外のコンビ・ハイスペ男女主従……オタクが好きなヤツだ!

F氏自身は多分キャラを目的達成ツールとして生み出して動かすタイプなので、『世界観や物語やキャラへの愛が溢れてる!!』みたいな根っから作家の作品からは検出できないドライなエキスが溢れてます。私はそういうとこもけっこう好き。システマチックに生まれつつ個性豊かで、信条があり、生き生きしたキャラ描写が楽しめます!私はめっちゃ好き!!!

 

以下動画からスクショ引用。
ドット絵を担当されているのは山下諒氏です。(ポプテピピックなどに参加していた作家)

マル

主人公 / 勇者を輩出する町の商人見習い / 勇者の兄

『なぜ銅の剣までしか売らないのか』に疑問を持ち、弟である勇者バツを助けるために『商人の立場』で世界を旅することになる主人公です。

クレバーで商才があり、厳しい環境でも努力と行動力で這い上がっていくことができるバイタリティを備えた人物。他者に対してはかなりドライだけど弟や育ての親への情はしっかり持ってる…っていう人間性の多面バランスが良い。好きだな。

実の父親はドクズ・母は過労死・弟と共に飢餓で死にかけるといった重めのバックグラウンドが小出しで語られます。これも彼の人間性や言動・人間関係に説得力を与えているし、物語的にもテーマ的にも効果的に効いててメチャクチャ良い。

割と努力教みたいなところがあるんだけど、きれいごとというより寧ろその逆で、ヒドい環境から自分の努力と才覚で這い上がった経験ゆえ、という感じ。努力と思考を放棄している“弱者であることに甘んじる弱者”にはとことん厳しいというか、冷徹です。逆にどんなに人でなしでも停滞せず努力と思考を働かせている人物に対しては一目置くタイプですね。

ただ、自分にできることをしない他者を蔑む、という考え方は理想論的で、人間を信じすぎているとも言えるのかな。そういう部分もしっかり描かれています。

好きなんだよな、マルのこういう人間性が。根拠のある価値観と人格が好きなので…。

 

勇者バツ

主人公の弟 / 天啓で選ばれた勇者

剣の才能に秀でた勇者。兄であるマルと違って誰にでも優しく、誠実で、自己犠牲を惜しまないタイプの人物です。マルと同じで酷い環境で育ったヒトなのにこの心根の持ち主なのすごい。

彼が勇者に選ばれたことがきっかけでマルの物語が動き出す、起点となるキャラですね。

 

店主

勇者を輩出する町の武器屋の店主。そしてマルとバツを引き取った育ての親です。

真実を追究しようとするマルとは反対に保守的というか、何かを明らかにしたり身の丈以上のものを追い求めることにやんわり否定的なタイプ。でも性質は違えど二人のことを大切に想っている人です。

この『兄弟』と『血の繋がらない親子』の関係性描写や色々がめっちゃ良いんスよね……この作品……

 

スライム

旅の同行者

マルが道中で傭兵にボコらせて拾った“喋る”スライム。瓶詰にされた状態で持ち運ばれている。

いうなれば『人外マスコット相棒枠』みたいな存在です。
スライムの存在な……めちゃくちゃ良いんだよな……。

喋るという珍しい才能を持っているけど、弱者で勉強嫌いで……というマルをイラつかせる性質のキャラなんだけど、マ~~~~……存在が効いてくる………物語とテーマに………
マルとスライムがさ~~~~ いいんスよ………いい………ネタバレなしで喋ろうとすると「いい……すごく……」「たまたま出会った冒険の仲間でさあ……」「いいんだよな………」くらいしか言えないのだが……

 

サンカク&オウギ

名脇役コンビ

『サンカク』
マル以上に強烈な勤勉至上主義で頭のネジが5本くらい飛んでる商人。『片手の指を折ったらもう片方の指も折らないとつり合いが取れない』みたいな訳の分からない理屈で借金の取り立てとかしてるし、国家事業にも噛んでる。必要であれば暴力も厭わず、他人の痛みとか1ミリも感じないタイプの人。有能な狂人って感じ

とにかく独自の勤勉思想でめちゃくちゃベラベラベラベラ喋るので弱者全員を心身ともにボコボコにする存在です。

そんなサンカクの側近が『オウギ』。理性的でクレバーな有能秘書です。

サンカクの『有能だけど常軌を逸した人格を持ってて、一度ブッチンしてブレーキが外れたら止まらない。激烈に厄介』みたいな部分に上手にストップをかけられる片腕。めっちゃオタクにもウケそうなんだよな。あんまオタクに見つかってないけど……Fラン大学就職チャンネルだからかな…(そうだよ)

いい………。

マルにせよサンカクにせよオウギにせよ(あと紹介しない他キャラにもいるけど)、クレバーな人物のバリエーションが豊かで好きなんだよな。なぜ銅

 

 

見どころや好きなところ

オタクなのでキャラが良い~みたいな話しちゃう。そんな登場人物たちが織り成す物語が本当によく出来てるんですよ。関係性や考え方、物語開始時と終了時の変化もしっかり描かれていて良い…。

『なぜ最初の町では弱い装備までしか売られないのか?』っていう、本来は疑問すら持たなくて良い部分に敢えて理由をつけるなら、こういう真相でこういう世界観になるかもしれない。…っていう物語&設定作りをやりきってて本当に面白いんですよ~~~。

先ほど書いた通り、作者は就職や経済の理屈について芯の通った知識や考え方、そして経験を持っています。色んな人々を見てきた・社会の問題にアンテナを張っていて俯瞰的に物事を見てるタイプの人です。そんな人の描く群衆や人間描写はマジで見ごたえがあるんだよな~~~。そして人によっては腹を刺されます。でもなんで腹を刺されるかって言うとやっぱり中身が通ってるからだと思うんだよな。

『専門家の監修を受けて作られた作品』って土台がしっかりしてて見ごたえがあるけど、『専門家自身が創作性を持って作り上げた作品』ってまた違った凄みと良さみがあるよね。物語や設定への落とし込み、描写の原液みたいなものが溢れてて。ハコヅメとかもそうだけど(ハコヅメは本物の元警察官が描いているマンガ)

 

なぜ銅、本当に好きだ。私が本当に好きだと思う作品って、“オチ”がメチャクチャ秀逸なものが多いんだけど、なぜ銅もそうです。オチというか締め方というか?締め方が好きなんだよな。物語の締め括り方が……

以上です。ご清聴ありがとうございました。

 

おまけ・関連作品

ここからはおまけなので興味ない人は読まなくて良いです。

もし『なぜ銅』を見て肌に合った人がいたら「これも良いよ!」って思う同作者の動画も貼っておきます。私が貼りたいだけです。

ルールチェンジ大富豪

『なぜ銅』に次ぐF氏の長編シリーズ。全8話

生徒の自主性を重んじる小学校が舞台。6年生の学級委員長たちが実権を持って学校を支配していた。(下級生の委員長に決定権は無いです)
そんな彼らが学内の施設(遊具や掲示板、運動場など)の優先使用権を賭けて大富豪で勝負する話。

メチャクチャ陰謀と謀略と汚い人間の欲望などが渦巻くブラックで社会風刺的なストーリー、でもやってることは小学校の施設の取り合いっていうギャップが面白い。『なぜ銅』でのファンタジー世界観への落とし込みもそうだけど、F氏はこういう世界観変換が本当に上手いな~と思う。

この話は真相を暴くというよりは『どんどん展開していくストーリー、増えていく登場人物たち、それらがどこに着地するのか?』ってところが見どころですね。群像劇的な構成

最終話の盛り上がりがマジですごくて大好き。最終話はホビアニ(そうか?)(そうかな…)(そうかも)

 

無能投票

いらすとや動画。全5話

ある会社のグループワークに集められた100人の就活生。グループワークの内容は『無能と判断した対象に投票をして上位になった者を排除していき、最後に残った人に内定を与える』というものだった。
バトロワ的な就活サバイバル(?)です。

これも人間の汚いところと謀略と思惑がてんこ盛りで本当に面白い。『最初に名乗りを上げて取りまとめをしようとした人』が目立っちゃった結果真っ先に排除されるんですよ。人間汚い~ でも納得感しかない。出る杭社会

排除者が出る物語構成上、色んな人の視点がどんどん切り替わっていくのも面白いです。就活バトロワ面白すぎる

 

エンタメの国

いらすとや動画。全4話

都会での仕事を辞め、辺境の田舎にやってきた主人公。不便すぎて途方に暮れていると、どこからともなく小さな妖精さんが現れる。
妖精は『えんため』に飢えていると言い、主人公に何らかの『えんため』を求めてくる。主人公が誰でも知っているような昔話をしてみたところ、大感動&大絶賛!!不思議な力を使って主人公の生活環境を整えてくれた!

人間目線では拙い技術で語られる『えんため』も、妖精たちにとっては垂涎もの。主人公は妖精たちに『えんため』を提供し、見返りにどんどん生活を豊かにしていって……

 

という話です。異世界転生モノとかで揶揄される『現代日本知識を持った俺TSUEEE』のエンタメ版って感じのストーリーかな。
勿論これも社会風刺や世の縮図・寓話的な要素がてんこ盛りで凄いです。向上しながら転落していくようなストーリー展開は舌を巻きまくっちゃった。

あとテーマが『エンタメ』なこともあって腹をザクザク刺して来て死にます。けっこうダイレクトにくる。つらい。でも面白い

 

まったり族誘拐事件

『ニコニコ村』に住む生首の生き物『まったり族』たちがどんどん『ヨウツベシティ』に移住していく!!!!!というあまりにもストレートすぎる動画サイト風刺ストーリー。全2話

ニコニコ村の衰退を揶揄するだけでなく、ヨウツベシティに巣食う闇にも突っ込んでいき、最終的にもうなんか全部メチャクチャにする感じの動画です。飛ばしすぎぃ!

 

がんばれ!ニコニコ商店街

いらすとや動画。全2話

地域に根付いたとある商店街の近くに大型商業施設『アイオン』の建設が決定した。商店街の人々や近隣住民は反対運動をはじめるが……。という話

2017年、F氏の動画だとかなり古めのやつ。私が「F氏おもしれえ・・・」って思ったきっかけの動画です。

 


 

他にも面白い動画山ほどあるんだけどキリがないのでここでやめておきます。Fラン大学就職チャンネル、死ぬほど人を選ぶけどほんとに好き。

マジで無限によくできた短編ストーリーが出てくるので、F氏の才覚に慄くばかりです。好きなクリエイターが本職キャリアコンサルタントという謎の字面。これが令和かあ