アニメ『平家物語』感想まとめ

平家物語を見ながら打ってた感想の断片をまとめた記事です。
全編きっちり感想打ってたわけではないので内容はまばら

1~3話あたり

アニメ平家物語1・2話見たんだけど良すぎるな……
平家がやりたい放題隆盛を極めてた時期の話だけど、内側に入ってみると色んな人がいる…みたいなのがじんわり入ってくる日常の人間描写が~~~……たまらん~~~

なんかまだ序盤なのにOP見てるとちょっとウルっとしてしまうな……結末が分かってる歴史ものだからだろうか。あんなキラキラした綺麗な笑顔のOPだけど、日本史知ってる人なら『この家滅ぶんだよな~』と思いながら見るわけで、絶対その心理ズレみたいなの狙ってるよ~~ズルいよ~~

冒頭とEDに出てくる白い髪の女は未来のびわなんだろうか。続きも楽しみだ……


 

平家物語のOPほんと良い

何回だって言うよ 世界は美しいよ
君がそれを諦めないからだよ
最終回のストーリーは初めから決まっていたとしても
今だけはここにあるよ 君のまま光ってゆけよ

-羊文学「光るとき」より引用

終わり方決まってる史実もの作品のOPでこの歌詞と映像なのほんとズルい まんまと泣きそうになる
ごめん嘘泣きそうじゃなくて普通に泣いてる 曲買った


 

なんかマジでアニメ平家物語OPの「世界は美しいよ 君がそれを諦めないからだよ」って歌詞が良すぎて良すぎて良い……良いな………ってなってる。

多分こう、『“美しい世界”は誰かの願いや望みによって(主観的に)生まれるものである』と定義する概念が好きなんだろうな。願いであったり、誰か大事な相手の存在であったり、そういう主観を通して『世界は美しい』と思える人のことを美しいと感じるのかも。

 

4話~6話あたり

平家物語4話、良い意味で体感1時間くらいあったな…
なんか1話の中でけっこう色んな出来事が発生してるんだけど駆け足感が無いというか。出来事一つ一つの密度が凄く濃く感じられてスゴい

そして一番重要なラストシーンも余韻たっぷりに描かれてて……こういうのなんていうんだろう~~限られた尺の中で色んな出来事やそれに伴う感情をしっかり描き切ってるの すげ~~~~~……


 

私は尺的な制限のない世界で生きてるアマチュアおえかきマンだから『〇〇ページで収める』とかは考えず『ネームできたページ数でOK』って感じだけど、やっぱこういうアニメとか雑誌連載マンガとか制限の中で巧みに色んなことを濃厚に描き切ってるもの見るとすげえ~~~~~~~!!!!!!ってなるしプロの業なんだよなあ~~~~~~

自分もページ数制限設けて何か作ってみれば~?って思ったけど絶対し゛ん゛ど゛い゛ってなるからできる気せんな……
でも、ページ数多く使えば濃厚な話が描けるかっていうとそういう訳では無いと思うのでこういう圧縮して濃厚にしてる作品をしっかり見た方が良いもの描けるんだろうなあ。

平家物語4話マジですごかったし、四畳半アニメとかも限られた尺の中でムチャクチャ濃厚なんだよな~


 

平家物語、おおまかな登場人物や壇ノ浦時点で生きてる人物はこの辺~くらいの知識はあるけどそれ以外はフワフワなので「この人死ぬんだよな・・・でもいつ死ぬか知らないな・・・そろそろ死ぬのかな・・・あ、ここではまだ死なないんだ・・・」っていう謎の視聴体験をしてる

 

7話

平家物語7話見た。
この作品、『直接描かずに人の死を描写する』のが本当に本当に上手いなあ…
7話の随所で見られた椿落としとか正にそれだよなーー。椿は花が丸ごと落ちるから人の首が落ちる様を連想させる=死を暗に示す背景アイテムになるやつ…

ていうか今回泣くポイント多すぎてアホほど泣いてしまった。マジで泣いたって言いすぎて嘘くさくなりそうだけど私が感想で泣いたって書いた時はマジで泣いてるので…
徳子と上皇で泣いたし清盛で泣いたし資盛で泣くしさ~~~モ~~~

特に清盛の死にざまなんか小学生の時教育歴史マンガで散々読んだのにまさか泣かされるとは思わなかったよ。頼朝云々のところは清盛だなあって感じで普通に聴いてたけど最後の一言がずりいよ!!!!!!ウオ~~~ン!!!オ~~~~~ン!!!!!

そんで資盛さ~~~~~~~~~~~~~~・・・・・・「平家の終わりを予感して部外者のびわを巻き込まないように出て行かせる」をあんなふうに描かれたら泣くやろ!!!!!!!!
最初に書いた「直接描かずに人の死を描く」もそうだけど、「そのままストレートには描かないけど十分伝わる」みたいな描写が巧すぎるマジで 平家物語本当に本当にすごい作品だ・・・。

 

9話

平家物語9話見た

平家の移動の仕方が回を追うごとにどんどんみすぼらしくなっていくの本当にああ…ってなるな。そういう物語であることをゴリゴリに感じさせてくる
徒歩になっても徳子が安徳天皇を背負ってる(力のある男衆に任せたりはしてない)の、本当に我が子への愛や高倉上皇への想いが伝わってきてグシャグシャになっちまうよ……マジで平家物語の『直接描いてないけど伝えてくる力』が毎度すごい

敦盛の有名なエピソードもちろん流れも顛末も知ってたんだけど、この平家物語が描いてきた平敦盛と平清経っていうバックグラウンドがズシンと乗ってイヤア……すごかったな……。ごめん原典で敦盛がどれくらい掘り下げられてるかは分からないのでどこからがアニメオリジナルなのかは判断できないんだけど

私でも覚えてる逸話としては『敦盛は熊谷直実に背を向けず戦った。直実が敦盛を追い詰めた時、自分の子供と同じくらいの少年であることに気付きためらったが、敦盛は自分の首を獲れと言った。(その出来事は熊谷直実の中に強く残った)』っていう、所謂『要約した悲劇的美談』の部分だけなので、そのエピソードを聴くだけで心が揺れ動くってことはなかなか無かったんだよね。

でもこうやって、敦盛の人となりや清経たちとの関係、「我らが戦いましょうぞ」というやりとり、清経の最期を丁寧に描いた上で見るとまあ 泣くよ
敦盛は、『武士として潔く戦うこと、死ぬこと』を全うした……だけではないんだよな~~。清経と果たせなかった想いとか虚脱感とか、自棄もあるけど別に積極的に死のうとしてたわけじゃないし、清経との繋がりは戦ではなく笛だし でも敦盛はあの場を死に場所に選んで 清経と同じ“海”に ア いやうまく言えね~~!!!敦盛と清経についてちゃんと言いたいことまとめようとすると半日くらいかかる

自分の中で断片的にしか知らなくて、点でしかなかったエピソードが“線”になって、その繋がりや流れでもって全力で感情を揺さぶってくるところ、平家物語のものすごくすごいところ~~!!なのでギャン泣きしながら「すげえよ~~~すげえ作品だ~~~~」ってなってる毎回。清盛逝去のところもそうだった


 

平家物語、愛着を持った登場人物が情感たっぷりに死んでいくところがある種の見せ場であるし泣き所でもあるんだけど、『人が死ぬところで泣く、栄枯盛衰に切なくなる』っていうのはあくまで外郭だな~と感じる。私は

平家物語アニメの真骨頂はやっぱり『丁寧に描いた点と点が繋がって線になるところ』だなあ。そうやって線になっているからこそ様々な記憶の音が多重に響きまくって心が揺さぶられるというか。そこが本質で、そういう作りになっているような気がする。そしてトヤマはメショメショに泣く

それに、『歴史を語り継ぐ』っていうテーマとしても本当にマッチしてて良いよなあ~この線になっていく感覚


 

それはそうとしてものすごく軽い方の感想なんだけど

敦盛が最初出てきた時は「ヒャ~すっげえ美少年 やっぱエピソード力がちげえわ 顔に表れてるわ」って思ってたんだけど、義経の美男子レベルが完全にカンストしててツラ見た瞬間ちょっと笑ってしまった。
敦盛はまだ顔や目のラインで個性を強調して加減(?)した美少年だけど義経は完全に現代人目線で美しく見えるラインにだけ全振りした顔しててやばい。こいつだけ少女マンガにいそうなツラしてるんだもん。頼朝と骨格が違いすぎるやろ 美男子のインフレ

キャラごとに目や眉や骨格のデフォルメで強めの個性をつけてる作品だからこそ義経の美男傑出度がハンパなくて面白すぎる すっげえツラ

もし私が歴史のこと全く知らなくて平家物語初見だったら『なんでこの人だけしれっと出てきてこんな尋常じゃない美男子に描かれてるの!?!?!?何者!?!?ラスボス!?!?!?!?』ってなりそう(?)いやまあ平家目線だとラスボスに近い存在なので当たらずも遠からずという感じではあるけど

 

10話

平家物語10話見た。11話はまだ見てない一気に見るのは無理

維盛の足の裏がギュってなるところとか、身投げ前のわずかな震えとか、本当にこのアニメの作画の芝居はすごいなあ…。
資盛との再会シーンでベソベソに泣いてしまった(いつも泣いてんな…)なんか上手く言語化できないんだけど重盛の息子キャラたちの中で最後に残るのが資盛なのさあ……良いよな……

ほんと義経って本人の出自から周辺人物の濃さ・静御前とかいうヒロインの登場・エピソード一つ一つの強さなんやを見てると本当に歴史の中でもザ・主人公っぽい存在だなあと このアニメ見てると改めて強く感じるな。なんなんこいつ?ヒーローすぎるやろ

義経の圧倒的ヒーロー感、かなり意図的に描いてると思うんだけど(メチャメチャ美男子にしてるし)これもこのアニメにとってかなり重要な部分のように感じるんだよな。
義経という時代のヒーローがいる。一方で驕りたかぶった挙句衰退し逃げ回って滅んでいく、ヒーロー像とは程遠い平家の人々がいる。でもこの物語の主役は『平家』なんだよと、びわはそんな彼ら一人一人を語り継いで行きたいと思うんだと・・・そういう、そういうことなんだよなあ・・・・・。

驕り高ぶって滅んでいく、俺たち一族の末を、か。
ま、俺なんぞは登場しないだろうが

-平家物語10話より引用

ダメなんだよ私こういう『主人公になれない人を主人公にする物語』にべらぼうに弱いんだよ このテーマ性を思うだけで普通に泣くんだよ オ~~~~ン!!!!!アニメ平家物語のテーマの本質を浴びた!!!!!!!ア~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!

この作品の本質に限りなく近いであろう台詞を資盛が担当してるのあまりにも良い…。平家の終焉を予感してびわを追い払ったり、嘆く清経(誠実さや実直さは意味をなさぬではありませんか)に対して「我ら平家にそれがあったと…?」って言った資盛~~~ ああ見えて物事を俯瞰して見ることができる(ように成長した)人だったからこそなんだよな~~!!
テーマ性に肉薄する台詞だけど、作品に言わされてるって感じじゃなく彼の言葉として入ってくる 良い 良い~~~~~

 

平家物語、平家物語という原本をベースにしつつ、オリジナルアニメ作品として作っていく上での『テーマ性の組みこみかた』がマジで死ぬほど好きなヤツで本当に本当に本当に良い
あまりにも良い作品

 

11話

平家物語11話見終わった なんか もう 良い作品だなあ……

最後までOPEDカットせずに入れるスタイル好き。この作品にものすごくマッチしてるよなあ。
OPはこの作品のテーマ性を真っ直ぐに表現して、そこに生きている人々のありのままの姿を描いているし、EDは少しズラした方法で作品のテーマ性を表現しているように感じた。

11話最後に落ちた沙羅双樹が巻き戻っていく演出、『語り継ぐことでその生が蘇る』的な意味合いなのかなあと受け取ったけど、それってEDラストの煙が巻き戻る演出もそうじゃんと。だから最終回でもこのEDは通常通り入って然るべきなんだなあ~~~みたいなことを思ったな。

徳子が生き残るのは勿論原本通りなんだけど、なんだろうこの作品としても生存者が彼女なのメッチャ良いんだよな…あっ またうまく言語化できないやつだ

ていうかこれ資盛生き残ったやつ~~~~…!…!?で合ってる…!?よね…??。。。。。。学が無いのでwikipedia先生読んでたんだけど、資盛は平家物語的には死んでるけど他の書物だと壇ノ浦では死んでないって書かれてたりするんですね。そっちのネタを取り入れたってことなんだろうか。
どっちにせよびわ目線では死んだとしか思えないから『死んだ』と言う風に語り継いでいるけど、このアニメの資盛は入水後どこかに流れついて生き残ったって感じか~あ~~~…(さまざまな感情)

この作品に関して生き残ったから何というわけでもないのだけど(前提として平家の皆が生きて死んでいく物語だから生き残ってほしい~~!とかは特に無い)それはそうとして生き長らえたのか…資盛…という気持ちには…なる…。
資盛はけっこう早い段階から滅亡の未来を予期していたし、自らも近いうちに死ぬだろうとか思ってただろうな~って想像できるからだろうか。そういう人が生きながらえたって事実なんだよな

なんかよくわかんないけど資盛がスゲ~好きだしびわと資盛見てると輪をかけてボロボロになるな…涙腺が…

後の生存者としては宗盛かあ。でもこの後斬首されてしまうんですね。なんだかこれまで描かれてきたキャラ造形としてもあそこで入水できないの“分かる”のでアニメとしてのキャラ付けや落とし込みが上手いなあ…。いや~本当に……生きた人々だ・・・・・

 

公式読本

平家物語公式本読んだ

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今月中旬に届いてから「最終回まで見てからにしよう」と思って置いていたのだけど、大正解だった。めちゃくちゃ普通に10〜11話の絵や台詞入ってるわ

厚い本では無いけれど、その中にこの作品の誕生・育っていく様と作り手の想いが丁寧に綴られていて良い…。キャラクターの設定画やラフも充実しているし、各キャラの描き下ろしイラストも使われているし贅沢な一冊だ……平家物語アニメ好きなら買って損はないと思う。

資盛のページに使われてるセリフが10話の一番好きなところでウ゛ッ……となった ありがとう…
高野先生による清経と敦盛の描き下ろしツーショットもよう…ありがてえなあ……平家物語で普通にオタクみたいな反応してしまったけど するでしょ…メインキャラ全員分描き下ろし(高野先生がアニメを見た上で描かれたイラスト)があるの嬉しすぎる…

あと山田尚子監督の発する言葉に触れるのは今回が初めてだったんだけど、なんというか言葉選びの一つ一つにこのクリエイターの凄さが詰まってて圧倒されてしまった。語りの文章に
(作品にはとっくに圧倒されてる)

使うワード一つ一つを優しく拾い上げてきて、手近になければ遠くまで旅をして一番言いたいことに合うものを探してきているかのような言葉選びというか……?更にそれを丁寧に編み出して来ているような文章で、かつどことなくチャーミングで、すげえ…すげえなあ……なんだ…この人……

やばい作品とすごい作り手に触れた時のあの、でっけえ海の真ん中にぽつんと放り出されて自分は何も知らないんだな…みたいな気分になるアレになってる ああ〜〜ものを生み出す人々はみーーーんなすごい…

 

その他

TVアニメ「平家物語」公式サイト
琵琶法師により語り継がれ、後世の文学や演劇に大きな影響を与えた大古典『平家物語』。《監督》山田尚子×《脚本》吉田玲子×《キャラクター原案》高野文子×《音楽》牛尾憲輔による初のTVアニメ化!

公式サイトトップで見れるビジュアルが好きすぎる
こういう群像的なアニメの群像的なキービジュアルが好きだ…