風が吹こうが吹くまいが


紅丸「オレは今、名前を二つ持ってる」


さゆみ「本名の『紅丸』と、当主の『シオミ』?」



紅丸「ああ。名前を継ぐってのはオレの個人的なアレだったんだけどよ、イツ花のヤツ、不退転の意!!だとか、大袈裟に取っちまってな。ハハ」
紅丸「よくわかんねー間に”しきたり”ってコトになっちまった」
さゆみ「な~るほど イツ花ちゃんならやりそう」
紅丸「オレが死んでさゆみが当主になったら、さゆみも名前を二つ持つことになる」


さゆみ「父さんって死ぬの?ウケる」
紅丸「おまえほんとにオレの娘だな ウケるだろ」

紅丸「まぁ、ちぃとめんどくせー話だが一応話しとくわ テキトーに聞き流しとけ」
さゆみ「うん」


紅丸「オレの親父殿…うちの初代当主サマはさ、バカみたいにお人良しで、手前の悲願達成を誰より願ってるクセに、オレたち子供の生きたいように生きてほしいだとか、死ぬときの後悔をできるだけ少なくしたいだとか、そんなコトを言ってた」



紅丸「ムチャ言う親父殿だよな 全く」
紅丸「ただでさえオレたちの一生は短い。その上当主サマなんてめんどくせえ役割で、そんな風に生きるとか…めちゃくちゃ難易度高えっつーの」
紅丸「一緒に居たのは晩年の2か月だけだったし、オレも当時はもっとガキだったからよ、正直よくわかんねーめんどくせえ親父殿だなって思った」

紅丸「まあ、親父殿のそういうとこは嫌いじゃねーんだが…。んでオレはそんな親父殿に二代目当主に選ばれて、親父殿の名を継ぐことにしたんだ」
紅丸「これ、意味わかるか?」




さゆみ「ん~…半分くらいなら気持ち汲んでやっても良いかな的な?」
紅丸「…おまえ、ガキのくせに久音兄上殿より物分かりが良いんじゃねえか?」



さゆみ「そーいえば記録とか見てたんですけど、たま~にどー考えても戦果の見込めない討伐してますよね。それって例のアレってことですか?」
紅丸「まァ、そんなとこだな」



紅丸「オレがやってきたことは、大雑把に言えば3つ」

「ひとつ、朱点のヤツをぶっ飛ばすために一族を強くする…まあ、今のオレにできることっつったら死なせない、くれぇだが

「ふたつ、あいつらが死ぬときの後悔を減らせるかもしれねー道を選ばせてやる」

「みっつ、隙を見てサボって遊ぶ」




紅丸「別にさゆみはこの通りやらなくても良い。」
紅丸「オレはしばらく逝くつもりは無えから テキトーに考えとけ」
さゆみ「う~ん…あいわかった”親父殿”~♪」




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