映画『すずめの戸締まり』感想


すずめの戸締り見てきた。公開日に行くぞ!!うおおお!!!っていう感じでも無かったんだけど、用事で出かけるタイミングと合ったので

いや~~~面白かった!色々あるけど何というか私的には過程にワクワクする作品だった(勿論終わり方も良かったけど)キャラも良かった。関係性や感情も良かった!

以下ネタバレ感想

 

鈴芽の冒険譚

ここまでがっつり冒険譚やってくると思わなくて、中盤ずっと良い‥‥ってなりながら見てたな…
九州からスタートして愛媛、神戸、東京…とどんどん日本列島横断していってウワ~~~~若人の大冒険~~~~~~良い~~~~~~!!!!ってなりながら見てた……あとさ……現代だとスマホがあれば(それが電子決済に対応してれば)どこにでも行けるんだ……スゲエ……ってなった。それでも高校生の少女にとっては大冒険だが

未成年の少女が単身(椅子もいるが)地元を勢いで飛び出してあっちこっち旅するの、現実的に言えばメチャクチャ危ないんだけど、だからこその非日常感というか、舞台は間違いなく現代日本の日常風景なのに非日常を冒険している感覚というか、そういうものが超~~~良かった……。こういうフィクション大好きなのかもしれない。もう心が完全に駅で隣町にいくのにもドキドキしてたキッズ時代に還って鈴芽の旅をキラキラした目で見てしまっていた。
他人や大人に説明しにくいファンタジー現象が起きてるなら、多少危なくても飛び出せる勢いのある若者こそが主人公なんだよなあ!!!現実的な倫理観とのバランスも(私的には)しっかりしてて丁度良かった

その旅の過程が好きだったので、EDで順番に旅で出会った人たちのところに寄っていく一枚絵でメチャクチャ泣いてしまった。今思い出してもちょっと涙ぐんでしまう なんだこの涙腺ポイント
みんな善い人で世界が美しかったな。いいな……

 

鈴芽というヒーローがまじで良い

とにかく鈴芽が自分の力で先へ先へ力強く進んでいくところが良くて、冒頭日常の中下り坂を自転車で降りていくシーンは足ぶらぶらさせながら軽~く進んでいくんだけど、草太さんを追いかけるために引き返すシーンは上り坂だから汗かきながら必死にペダル漕いでるじゃん。ああいう絵的な演出も良いよね……。草太さんを追いかけ非日常の世界に向かっていくことがどういう状態か、っていうのがあの自転車で上り坂を行くシーンにめちゃくちゃ現れてて
自転車といえば最後のおばさんが漕いでくれるとこにもなんとなく繋がってて良かった。自転車を必死で漕いで前に進もうとする人たち

鈴芽は見かけ以上にバイタリティのある女の子だけど、なんかな すごい好感が持てるバイタリティヒーロー一般人少女だった。ここ上手く言語化できないんだけど……
バックグラウンドとかも含めて『ああ、岩戸鈴芽はこういう子なんだ かっこいいし素敵だし美しいな…』と思えるんだよな。なんというかこう一つの人格の形として好感が持てる…まあなんというか前に向かっていく性質が一貫してて気持ちの良いヒーローだったという感じだろうか

鈴芽が「自分が要石になる」っつったのも、自己犠牲ヒーロー的な発言ではあるけど『将来があって心配してるダチもいて大切な草太さん>そういうのは無いしおばさんにとって邪魔な存在かもしれない自分』っていう思考の結果なんだろうなっていうのがこう 流れがちゃんと分かるのがよかった。誰かが『設定は矛盾しても良いけど感情は矛盾させてはいけない』って言ってたけどその通りだと思った。

鈴芽と草太の関係も、最初は容姿と雰囲気に惹かれて、だったのが椅子パートもあって完全に魂に惹かれ奴になってたのも気持ちが・・・よかった!良い主ヒロだった

 

粒ぞろいのキャラとプロの出汁職人

主人公である鈴芽がマジで力強くてバイタリティがあって、でも高校生の少女でマ~~~ジで好感度高いんだけど、他のキャラも皆良かったな……

草太は助けないといけないヒロインポジションとして、ちゃんと『助けたい』と思える魅力的な人物として描かれていたし、芹澤はマジで名脇役のお手本みたいな存在だったし、最初は蚊帳の外だった環さんが物語の中心に割って入ってきたところ、思わず胸の内を言っちゃったり色んな面で人間性が知れたのも良かった。

環さんが鈴芽に悪態ついた後のやりとりが印象的で、印象的って言いつつ細かい言い回しは記憶があやふやなんだけど、『それが全部じゃない』みたいなのが良いな~~~と思ったんだよな。
鈴芽がいたせいで人生の歯車が狂ったのも本当で、鈴芽のことが大切なのも本当で、人間ってそういう複雑な、一言では言い表せない多種の感情を持って生きてるじゃん……みたいな人間観が見えてかなり良い……。

『本当はお前が邪魔だったんだ』もしくは『邪魔なんて思うわけない、自分はあなたが何より大切なんだ』、どちらか一方の感情だけで人間を描くと、それはもう計算式で割り出せてしまうような人格になってしまうじゃん。まあフィクションの場合そういうキャラがいても良いんだけど、でもこの作品における人物像の深み的には『両方ある』っていう形だったのが好きだなあ。

環さんの描き方好きだな。人間って単純じゃねえんだよが詰め込まれてて。環さんが鈴芽を育てたことで婚期も逃しちゃったみたいな話が頭にあったから、芹澤が出てきたところで『ここくっつけて解決しちゃう展開全然ありそうな雰囲気だな…』ってちょっと思ったし、この二人の描写は多少狙ってやってると思うんだけど(実際好感度は高かったと思う)
作中としてはそれ以上は描かず、地元の岡部さんの存在も含め『その後どうなったかはご想像にお任せします』くらいの塩梅だったのが良かった。環さんのあそこら辺は映画の尺の中で解決するとスピード感ありすぎて絶対雑なご都合処理っぽくなっちゃうから。作中はなあなあで終わらせたのマジで誠実だったと思うよ…

 

芹澤、草太との関係にしても鈴芽や環さんとのやりとりにしてもどこを切っても良い味出しててスゲー良かったなあ。マジで魅力的な脇役だった。主要人物たちの味わいを深める出汁職人だった(?)
見た目はチャラいけど真面目に教職目指してる丸メガネオンボロオープンカーの善人男、すごいな

草太相手だとまず『この二人雰囲気は真逆だし仲良くなった過程は描かれてないけど、ちゃんとなんとなく想像できる、いいな』ってなるし、試験に来なかった草太に対する芹澤の反応やその後の協力的行動によって親友じゃんこれってなるし(よっぽど大事なダチじゃなかったらあんなに怒らないしあんなに長距離運転に付き合ってくれない)
2万借りてるくだりも面白いし、芹澤の存在によって作中で描かれてない部分の草太の人格がメチャクチャ補完されててすごい。

芹澤と環さんの絡みもほんとに良くて、そりゃあ鈴芽心配して東京まで来たらオープンカーのチャラ男がいたらあの反応になるわw!!っていう最悪なファーストインプレッションから長時間ドライブの中でちゃんと芹澤のあの溢れ出る善人さを感じ取って普通な感じになっていく流れ?が良すぎるな。
そんで作品の鑑賞者である我々は芹澤、良いヤツだからな~って知ってるけど、『なんかチャラ男だったけど良いヤツかも…』って情報だけ聞かされた岡部が「それ騙されてない!?」って思うのも分かる。笑
岡部と芹澤、一回会ってみてほしい(面白そうなので)

いやほんま芹澤朋也とかいう名脇役、周辺キャラのいいとこを引き出す出汁職人だな・・・・・・


意味:とも。ともだち。なかま。「朋友」「同朋」

名が体を表しすぎだろ両親預言者か?

 

ダイジンの話

色々書いてきたけどダイジン、ダイジンなんだよな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一回通しで見ただけなのでちゃんと理解できてるワケではないんだけど、ダイジンなんだよな・・・・・・・・・・・

悪役に見せかけて実際は好意と解釈がすれ違って意思疎通取れてなかっただけ、っていうミスリード要員、最後は要石に戻ってミミズ封印の役目になるちいさい生き物 なんか人間とは違う存在で言動が単純で意思疎通取りにくい故に見てるこっちはまあまあ複雑な感情にさせられてイヤ~~~~ なんていうんだこの…

役目としては最初の形に戻っただけなんだけど、あのモノ的な役割に多少意思のある生き物を割り当てるの様々な感情になるからやめろ~~~~~~~~~~ってなる これは本当にやめろって言ってるわけじゃないです やっぱり人間なのでモノで十分な存在を意志のある生物にされると感情が動いてしまう。感情が動くということは良い作品ということなので・・・

ダイジンは人とはちょっと違う存在だから人基準で受け止めるのも違うかな~~と思うし、ダイジンが要石に戻らないと世界は終わるのであの展開以外ないんだけど、ほんとあの役に多少意思のある小動物を使って描写をあの塩梅に抑えてギリギリのコーナーを攻めるような描き方、ズルすぎてムカつきますね・・・(褒めてます)

 

ダイジン関係の感想支離滅裂すぎる。もうちょっとまとめてこい
なんというかダイジン、あれ以上無機物だと感情が湧きにくいし、あれ以上感傷的に描かれたら(可哀想な犠牲者という印象が強くなり)物語を食ってた気がするから絶妙だったな・・・

ダイジン・・・・・・・・

 

その他

みんな言ってる公式も言ってる?らしいけど本当に直球で直近の震災を扱ってるので人は選ぶんだろうなと思った。

人間は昔から災害の原因をファンタジー存在に宛がってきた(江戸時代に地震とナマズを紐づけたり)けど、科学が発展して『地震や災害は何の人為神の手も無くただ自然に起きてるだけだ』と分かっても尚『災害はこういう人知を超えた存在が起こしていて、人の手で防ぐことができるんだ』という物語が描かれることにこう・・・ヒトの心理というか・・・業・・・?救いってなんだろうなあ・・・みたいな気持ちになった。私は被災者とかではないのでこの映画を見て当事者がどう感じるかは分からないのだけど。

人の手ではどうにもならないこと、現実ではどうしようもない現象に『明確な原因』と『解決策』を与えるのはフィクションの十八番みたいなところはあるんだけど(最近プレイしたゲームでもそういうのあった)なんとなく色んなことを考えてしまうな。


 

あとは~~声の演技ぜんぶ良かったなあ……。友人が松村氏のファンなのでそこもちょっと注目してたんだけど、ほんと違和感なく聴けたし鈴芽や他キャラも含めて『本職声優じゃない人のアニメ演技のいいとこ~~~!!!』って感じで良かった。こういうの見ると演じた本人はもちろん、ディレクション側の監督や音響スタッフ、役の採用に関わる人たち、みんなで『良い作品にしよう』っていう気持ちが一致してこの形になれたんだろうな・・・・って思えるので気持ちがいい

いい作品だったな~。とても楽しめた