ゲーム『春ゆきてレトロチカ』感想

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GWに何かゲームを一本クリアしたいなと思い、半額だったレトロチカをチョイス。クリア時間はそこまで長くないとのことなのでサクっとプレイすることができました。

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以下、全体の感想→終盤ネタバレ部分の感想 という感じで書いていきます。

ネタバレなしのゲーム感想

普通に面白かった。良くも悪くも実写映像ゲーム、という印象でした。

良くも、というのは『実写映像ゲームであることが内容にしっかり噛み合っていた』点で、
悪くも、というのは実写なのでこう、フィクションらしい派手さやぶっとび感、脳がデロンデロンに溶けるようなカタルシスを味わえる作品とはちょっと違うかな、という点かな。これは悪いというより人のツボ次第という感じかな?ストーリー的なギミックは色々あれど、読後感としてはじわっと染み入るようなお話でした。

ストーリーはしっかりと綺麗にまとまっていて、実写ドラマ的なテイストならではというか、2D3Dゲームではなかなか主役として活躍はしないような造形のキャラクターたちが物語の根幹に食い込んでくる感じは一周回って新鮮だった。普段チャカチャカのデフォルメ作ばかりやってる身なので。

同じキャストが事件ごとに違う登場人物に扮して登場する『マルチロールシステム』も面白かった。面白かったし、作品としてとても意味のあるシステムだったので良かったです。トヤマ作品と噛み合うシステムや表現だいすき

 

システム面はかなりゲーム不慣れにも配慮されてる印象で、推理パートは割と総当たりでもなんとかなるし、スコアを気にしないなら何度か間違えても全然クリアできる。あまり詰まらない作りになっていたと思います。(アプデしてこの形になった?らしいですね)

実写で普段ゲームしない層がやる可能性も考慮してなのかな?

推理パートでは色んな仮説を作っていって真相に迫る、というシステムで、あからさまに的外れなバカらしい仮説なんかもたまに出て来るんですが、個人的にはそういうの見てワハハってなるのも楽しかったです。RPGで町の人間全員に話しかけるタイプなので。

もちろん明らかに的外れな仮説作りは無視して進めることもできますし、そこはプレイスタイル次第ですね。

 

気になる点(ネタバレなし)

推理パートについて

そうやって色んな仮説を作って遊ぶのは楽しかったんですが、その演出がややクドいのは気になりました。めちゃくちゃたくさん仮説を作っていくゲームなのに毎度毎度『ドゥン………。(映像)仮説文(映像)仮説文(映像)仮説文……』なのは正直テンポ悪いかな……。止め絵ならまだ良いんだけど映像あり、しかも巻き戻し映像だと「なげーーーー!!!」ってなりました。仮説映像の色調反転巻き戻し部分、いる?

Bボタンで加速することはできるんですがね~。もうちょっとサクサク仮説作っていけるとよかったな。

 

ゲーム性について

基本的に映像を見るゲームなので実際に操作できる部分は割と少な目ですね。これも好みが分かれそうなところ。『ゲームやるぞ~』と思ってプレイするというよりは、『ちょっとゲーム的な操作体験ができる実写ドラマを観るぞ』という気持ちでプレイするのが気持ちのズレがなくできそうな気がした。

 

真相解明パートで選択肢を間違えた時

あとこれは私個人の感覚すぎて他の人はどうか分かんないんですが、実写な分真相解明パートで誤答したときの精神ダメージがやや大きいです。笑

例えば逆転裁判とかだと平面構成ですし、裁判長や検事に雑になじられてライフが減って終わり、というテンプレなので誤答しようが何しようがさして気にならないんですが。

レトロチカって実写な上に主人公が「真実…見えました!!」みたいに啖呵切って真相解明パートが始まるので、間違った時の恥ずかしさがすごい。その場にいる全員が実写で、役者さんがそれぞれしっかり演技をして画面情報量たっぷりに「お前何言ってんだ?」の反応をしてくるので、「ギャ~~~!!」ってなります。あれですよ、共感性羞恥ってやつ?

 

気になる点(構成についての微ネタバレ)

直接的なネタバレは無いけど、構成について話してるので区切ります。未プレイでゲームの全体構成を知りたくない人はここまで

 

 

レトロチカは序章・1~6章・終章の8幕構成なわけですが、終章の出し方が!!!ちょっとどうかと思いました!

ストーリー的には終章まで見てこそ綺麗にまとまる構成なのに、6章後にスタッフロール流しちゃう(それもめちゃめちゃ長い)→タイトル画面に戻るとメニューの下にちんまりと終章へのリンクが発生 という形。これ人によっては見逃しちゃわない!?私も正直「おまけパートかなんかかな?」と思って始めたからびっくりしたよ。完結編じゃねーか!!って。

感情として「これで終わり?→あれ?なんかメニューに増えてるな→ワーーー!!」ってなるのは面白いっちゃ面白いんだけど、それがこの“ゲーム体験”に必要な感情かと言われると『普通に6章から直結で誘導してくれや』という気持ちの方が強かったなあ。見逃されるリスクの方が高いよこの構成。スタッフロールは終章の後でいいし、6章後にまだ続きそうな匂わせをもっとしてほしいし、終章の入口はもっと主張して良いと思う。おまけじゃなくて本編最終回なのにあんなに隠れちゃダメでしょ。と私は思うんですが…どうなんですかね?

通常エンドと隠れエンドがある某ゲームでも、隠れエンドがあるんだろうなって思わせる演出をけっこう入れてたので、なんか、なんかそういうのがあった方が良かったのでは…と思いました。

でも終章は良かった!良かったからこそもっと誘導してほしかった!

というわけで以下から終章含めたネタバレ感想です。

 

 

ネタバレ感想

途中途中の感想はてがろぐで書いてるので省略。6章終わった時「あれ?叙述ギミックなし?書き物に記された事件と映像そこまで素直に受け取って良いんだ!?」ってとこが一番拍子抜けだったので、終章でその辺しっかり期待応えてくれてよかった!予想外の驚きと期待通りの返しがしっかり揃っててしっかりしたミステリーだなあって思いました。いや佳乃が出てくるのは私は普通に予想外だった。

如水・常盤子・佳乃という3人の不老者が一堂に会す様、絵面としては壮年女性とおばさん×2という、なんというかデフォルメキャラクターものでは絶対に見れないラインナップって感じで興奮した。読書想像の中の如水が『若くてイケメンでかっこいい不老者』で、それがめちゃくちゃデフォルメキャラクターっぽい造形だったからこそ『真実はこうである』のコントラストが映えるというか。実写であることも手伝ってめちゃくちゃ実感の湧く真実で良かった。

 

これはレトロチカとは関係ないんだけど、デフォルメキャラクター作品における壮年以上の女性キャラの地位ってやっぱそんな高くないなとオタクは感じてて、あの手の作品だと女性キャラはやっぱり外見が若いということが重要な印象があるんだよね(おじさんキャラと違って)。これは私がアニメばっか見てるからそう思うだけで大将年齢層が上のマンガ雑誌とかだとこの限りではないと思うんだけど。

普段そんな作品層にばかり触れてるタイプのオタクだったので、クライマックスで壮年以上の女性が真実を語り合ったりエモーションをしている様はどこか新鮮で、なんかいいな~と思いました。普段触れない感じのものに触れると世界の広さを感じられていいよね。

 

何を隠そう色んな事情があって本来の年齢差とは違うあべこべな外見になっている肉親キャラクターっていうのが地味なツボなので、外見が若い母と老いた娘の図はめちゃくちゃ興奮しました。

役者さんもすごくて、今まで落ち着いて大人をやっていた(し実際100年生きてるわけだからその内面もかなり成熟しているであろう)佳乃が、如水を前にして少女だったあの頃のように感情を露わにして泣きわめくシーンが・・・・・・。実写であり役者さんがそのシーンのためだけに演技をする映像でしか受け取れない情報量がありましたね。外見はおばさまだけど、母を前に泣きじゃくる様子は本当に少女だった。すごい……

 

常盤子の「私は誰かの物語になれない」がよくて、こういう誰かが誰かを思い思い合う人間関係の中で、愛を求め何も手に入れることができなかった、愛の人物相関図から孤立してしまっているようなラスボスは……色んな感情になれて私は好きですね。他の人たちは常盤子のこと「本当は止めて欲しかったのでは」とか色々推測していたけど、本当のところは彼女の胸の内にしかなく、それを抱えたまま自死を選んだ彼女の様が私は好きだ。

四十間でも賢木でもない外部者、何者でもない、ただ永山という人の愛の対象に……なんだろう、言葉を借りると四十間永山という人の物語になりたかっただけの普通の女性が不老になってしまい、ラスボスになっちゃった因果がいいよね……。永山はどうしようもないカスだけどね

 

いいゲームでした。おしまい