弟と弟









紅丸「おい 兄上殿」
久音「…紅ま…シ、シオミ殿、何か用か?」
紅丸「あんたらは紅丸でいいっつーの。相変わらずクソ真面目だな 寿命の前に毛根が尽きちまうんじゃねえのか?」
久音「…………」

紅丸「…無反応かよ チッ」

「オレはめんどくせーことはしたくねえしテキトーに楽に遊んでたいんだがよ、空気が重いとつまんねーんだよ!」

紅丸「おい、兄上殿 親父殿が何故オレを跡取りにしたか考えたことはあるか?」
久音「……(考えるほど余裕がなかった)」

紅丸「これはオレの考えだがな、親父殿はオレかあんた、どっちを跡取りに据えるかって考えてたはずだ。」

久音「…は?」

紅丸「は?じゃねえよ あんたもしかして自分が当主になるかも、とか考えなかったのか?」
久音「………当主は豊姉上がなるものかと…」
紅丸「……………あんたけっこうバカだな」
久音「!?」

紅丸「最終的にオレが選ばれてるのに豊姉上殿が候補に挙がってるわけねえだろ…豊姉上殿が候補に挙がったなら悩むことなんかなかっただろうよ」
久音「…???」

紅丸「あー、それはもうイイや」

紅丸「要するに『何故年長の男で家族とも仲良しこよしでクソ真面目なあんたが当主に選ばれなかったのか』って話だよ」

紅丸「オレは見ての通りの放蕩息子だ。おかしいと思わねえのか?
あんたが親父殿の立場ならどう考える?オレか、兄上殿か、どちらに跡を継がせる?」

久音「……」

紅丸「普通は兄上殿、あんただ。うちの一族にとって大切な二代目をオレみたいなのに任せるなんていうのはバカのすることだ。だが親父殿はバカじゃあない。」
久音「…何が言いたい?」

紅丸「親父殿が博打を打ってでも守りたかったモンがあるんじゃねえのか?
あんたたち双子とかよ」
久音「…!」

紅丸「あんたは芽衣姉上殿にべったりな上に責任を感じてるんだろう?
当主になればイヤでも芽衣姉上殿にだけ構ってるわけにもいかなくなる。」

紅丸「しかもあんな状況だ」

紅丸「あそこであんたに次期当主を任せるなんて、それこそ鬼のやることだしな」

紅丸「お優しい親父殿はそう思ったんだろうな。んで、オレに後継ぎを任せた」


「まっ、オレの勝手な推測だけどな」

久音「……私のせいでおまえが重荷を背負うことになってしまったということか…」
紅丸「だからァ!すぐそういう風に考えるところがめんどくせーんだよ!ハゲるぞ!!」

紅丸「オレは死ぬほどだるいけどな、こうなっちまったモンは変わんねえんだよ
そうじゃなくて兄上殿がやるべきことは何だ?ここでウジウジ抜けた毛の数を数えてることか?」
久音「それは…」

紅丸「親父殿はあんたに家じゃなく姉上を任せたんだよ!じゃあその遺志を汲んでやれっつってんだよ」




久音「……おまえ、もしかして励ましにきたのか?」
紅丸「なんだそれ、ハゲジョークか?(励ましだけに)
あんたが使い物になんねーとオレが怠けられねーんだよ そんだけだ」




久音「(…紅丸、うちに来た時はとんでもないのらくら者だと思ったが……案外当主の器なのかもしれないな…)」

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