©Hakababunko / SHUEISHA, SHUEISHA GAMES
クリアしました。
ゲームの感想、ネタバレなしで書くか、ネタバレありオンリーで書くかがその時々で異なるんですが、今回はネタバレなし感想も書きたくなったので書きます。一応未プレイの人でも『話題だけど、どんな感じなのか』を知りたい場合は読めると思います。でもどういう類型の話かはわかっちゃう書き方をしているため、プレイしているときの感じ方を歪めたりノイズになったりする可能性がある。プレイ予定で本当に一切何も知りたくない人は見ないように。
すいませんけっこう率直な感想を書いちゃったので、そういうものでもいいよって人だけ読んでね。(ビビリ)
感想(ネタバレなし)
まず総括なのですがこのゲーム、『全然面白くないけどめちゃくちゃ面白い』という不思議な構造をしています。私は総合的には面白いと思いましたが、同時に「なんなんだ…」という感情もあります。それは一体どういうことなんでしょうか。自分なりに解体してみます。
このゲーム、途中まで………というか、進行度8割くらいまではぜんっっっっっっっっっっぜん面白くないです。すいません言い切ってしまいました。私は全然面白くないと思いました。
ゲームの進行としては逆転裁判に近い形式。話数で区切って、話ごとに解決すべき事件があり、調査パートと推理パートを繰り返して都市伝説の『解体』を目指すというものです。
ただ、この事件調査&推理&解体パートが、本当に全然面白くないです。調査はかなり作業みが強いし、推理パートも選択肢を選ぶだけ(かつペナルティなし総当たり可)、真相もかなりあっさりと「まあ、そうでしょうね」な結論が出るだけ。あと最後の最後でポンと重要な情報がお出しされたりと、ミステリーとしてはかなりお粗末な感じになっていました。
私はそんなにミステリーに詳しくないし、謎解きも全然得意じゃないし、真相解明系のADVは割と主人公にキャリーされる感覚で進めてしまうタイプなのですが、それでもです、それでもですよ、そんな、控えめに言ってミステリーオタクレベルが高いとは決して言えない人間をして「ぜんぜんおもんねえミステリー」と思えてしまうレベルに 面白くないです。
正直、これが今ADV界隈で一番アツいゲーム???大流行して大絶賛の???冗談か???一体何が起きてる??これが絶賛されていることが最大のミステリーではないか?????と、ゲーム内容そっちのけで困惑していました。
でまあ、クリアして、「なるほどそういうことか」となったわけです。謎が解けました。このゲームが高評価な理由が。
このゲームは、ラストがめっっっっっっっっっっっっっちゃ面白いんですね。ほんとに最後の最後のクライマックスの盛り上がりが尋常でない。演出もメチャクチャいい。割とここまでのお粗末ミステリーをある程度置いておけるレベルには盛り上がるんです。そして、そこで幕が下りる。
つまりこのゲームの世間的な爆裂評価は『ピーク・エンドに極限まで振り切った構成』によってできあがったものだったんです。私はそう感じました。
『ピークエンドの法則』
という、有名な言葉があります。心理学用語かな?でも創作でもよく使われるので割と馴染のある人もいるかも。
引用します。

ピーク・エンドの法則とは、「人はある出来事に対し、感情が最も高まったとき(ピーク)の印象と、最後の印象(エンド)だけで全体的な印象を判断する」という法則です。
これです。都市伝説解体センターという作品の作りは、これが全てです。すいません言い切ってしまいました。私はそう思いました。
私はどちらかというとかなりピーク・エンドの法則に強めに引っ張られるタイプで、終わりが尻すぼみだったり「は?」って感じだったりすると、途中がどれだけ面白くても微妙な印象になってしまったりしがちです。逆に、序盤の初速がイマイチでもちょっとずつ面白くなってエンディングが最高最高最高最高だと「最高の作品!!!!!!!!!」ってなっちゃう方ですね。
じゃあ都市伝説解体センターは最高の作品だ!!!と言えるかと言うと、ちょっと戸惑う感じがありますね。ちょっとあまりにも、あまりにもピーク・エンドが全てすぎて……「ピ、ピークエンドがすぎるだろ、ここまでやっていいのか…」の感情が先に来てしまう。
一般的な『エンディングが最高な作品』のおもしろさゲージをこんな感じ↓だとすると、
都市伝説解体センターはこんな感じ↓ ※あくまで主観です
やりすぎだろ。
マジでここまで極端な作品って初めて触れたかもしれない。ここまで極端に『エンディングだけが面白い』作品って初めて見た。すごいな。もしこれを狙ってやってるのだとしたらそれはそれで怖い。クライマックスでビックリ!みたいな作品は世に数あれど、そのビックリだけで突破しているものというのはなかなか無いだろうし。
もちろん、何を面白いと思うかは人の感性次第なので都市伝説解体センターの序盤をめちゃくちゃ面白いと感じてる人も絶対いると思うけどね。ただ、色んな作品を踏まえて考えると「私だけが全く面白くないと感じるわけじゃないはず…」と考えています。まだ他人の感想やレビューは見てません。
でもやっぱり、この作品が最終的に高評価に落ち着くの分かってしまうんですよね。私の中にもピーク・エンドの血が流れているので……(?)ああ、わかるよ、あのクライマックスの盛り上がりを見せられたら総合的にめっちゃいいゲームだったって思っちゃうのは めちゃくちゃわかる。でも冷静に考えるとピーク・エンドすぎね?と思ってしまう自分もいる。そんな感じです。
私個人の評価としてはこんな感じだろうか。↓
グラフィックやBGMや演出含めてよくできたいいゲームだった。でもクライマックスをあそこまで盛り上げられるなら、途中のお粗末な単発ミステリーもうちょっとやりようがあったのではないだろうか。そう考えるとちょっとモヤモヤする。シナリオ面白パワーが有限ポイント振り分け式で、クライマックスにポイント全振りして他を省電力にしたみたいな作りだと感じた。
正直、口コミや評判の良さを知っていなければ2話か3話で投げてた可能性があるので、口コミ評価があるのって強いなと思う。そこまで言うなら一応続きやるか…となるので。
私なりの、このゲームの解体は以上です……
以下はネタバレあり感想です
感想(ネタバレあり)
いや~~~それにしたってクライマックス面白だったな。本当に。すいませんガチのミステリー好きとかなら割とまあ…あるオチですが…となるかもしれないけど、前述の通り私はそういう素養はないので普通に「ウワ~~~!」ってなれてよかった。所謂叙述トリック的な?
センター長が弟、までは「まあそうでしょうね」って感じで今までの章と同じ噛み応えだったんだけど、あざみ解体からの流れ変わったなで一気にワー!すぎる。演出もいいし、演出がいいよ。あざみが解体側に回るっていうのはゲームのクライマックス演出としてアツいね!!と見せかけて、同一人物オチへの布石でしたっていうのは良演出すぎでしょう。
あざみの謎、モノを知らなすぎる件とかが残ってたので一応プレイ中に「あざみが弟?」っていうのはちょっと思ったんだけど、性別違うやんってなったので流石にないかなーと思ってた。そういえば調査パートで弟って書かれてた気がするけどあれってどういう表記だったっけ?うまいこと引っ掛けられた?
そうそう、このゲームが色数抑えてるのもこのクライマックス演出にめちゃくちゃ効果的に出ててそれもよかった!!!これがフルカラーグラフィックだったら如月・センター長・あざみ全員同じ髪色とかにすると露骨~になりそうだし
脳内センター長もしっかり伏線だったのよかったなー。そこ電話繋がるのおかしくねえ?も伏線だったのでした。
プレイ途中の私の感想で『このゲームは都市伝説は結局人の手によるもの、をやっているが、センター長とあざみの能力は普通に超常なんだよな』とか言ってたけど、これをさ~~~!クライマックスで「うわーそういうことか~人の手じゃん!!」してきたの、よかったよね………
ていうかカンのいい人なら如月のメガネとあざみのメガネで全然気づけそうだな。すいません全然気付きませんでした。
前半あんな感じで言ったのにネタバレ感想絶賛のテンションで草。いいですか!この記事もピーク・エンドの法則をやっています!!!!!
うそです、引っかかるところもあるのでそこにも触れます。ピークエンドしません。
Youtuberグループが犯人で、その親が警察のえらいさんだから揉み消しましたというクライマックス手前のネタバラシ、私はちょっと冷めた目で見てしまっていて。なんかあまりにも『インターネットの人が望む、こうあってほしいと願う上級国民様の悪事』すぎるなあって。これがインターネットをテーマにした話じゃなければこういうオチでもいいというか、偉い人が実は悪い人なんて極めてありふれたネタではあったんだけど。なんか、インターネットの話だからこそ『一般大衆が望みがちな悪』を真実にしてほしくはなかった。という感情がなんとなくありますね。なんか、うーん、誠実ではない……
作品全体としてはインターネット、ひいては人類の愚かさをやっているし、そういう眼差しがあるのだけど、細かいディテールを見ると「ちょっと雑というか、手つきが迂闊だなあ」に見える感じはどうしてもあるのかも。この作品のインターネット観、「わかる」部分と「それはなんか変な偏見や風潮を助長しないか…?」となる部分が混在してる感じはある。都市伝説は人の手によるものだけど、陰謀論や有象無象の妄想は事実でしたと……して、いいのか?
ガチでその構造に向き合うんじゃなければ表層だけをふわっと触れるべきじゃないテーマに思えてしまうんだよな~。こういうのって。
そういえば、屋敷サラ情報後出しについても全部のネタばらしが終わった後なら『ポっと出の情報ってワケじゃなくあざみ=センター長のスーパー洞察によってなんか導いたやつ』ということか…と思うとギリギリ腑に落ちなくもない。でも単話のプレイ感触としては「ええ…」だったので、個人的な感情を言えば途中のプレイ味も大事にしてほしかった気がする。あまりにもクライマックスをやるためだけの話。クライマックスのためだけの話という感触なのはちょっといただけないな………にはなってしまう。途中もさあ…大事じゃない!?
謎が多い作品、「よくわからない」→「よくわからない」→「よくわからない」→「よくわからない」→「最後の最後で全部わかった!」みたいな形になるのは割とあることだと思うんだけど、そういう場合も途中の面白さやヤマって色々用意されてるイメージがあって、うーん。よくわからなさにもエンタメ性があるものというか…?
都市伝説解体センターって、その「よくわからない」フェーズでひたすらふんわりした粗末で強引な 事件解決を見せられて、「はあ…そうなんだ…」をずっと続けて最後の最後に「全部わかった!」がくるので、やっぱりちょっと味わいが違うんだよな。まあ個人の感じ方なので、ちゃんと道中も面白みをたくさん感じられているプレイヤーもいるのだろうけど。
面白くないと感じた時、もしかして自分がつまんない人間になってしまっているんじゃないか?とか変な心配をしてしまう。たすけてください
都市伝説解体センター、面白かったんだけど、面白かったんだけど、なんか、ここまで豪快に単話の面白さやゲーム的な駆け引きを投げ捨てて、ほんとにいいのか!?これでよかったのか!?ってなる複雑さが確実にあって、総合的には「なんか惜しいな…」になっちゃった。でもこのピークエンドの極み・途中省電力を狙ってやったんだとしたらすごすぎると思う。クリア時間20時間ってのも絶妙だよな………これ以上長かったらマジで途中が耐えられなかった。20時間はギリギリのラインだ。狙ってやったとしたらすごすぎる。
でも狙ってやったとしたらこのメソッドは浸透しないでほしいかもしれない。だってゲームやるなら、途中も楽しみたいし………