みなさん、異能力モノは好きですか?私はシステムがよく出来ていてじゃんけん的相性がある異能力モノに興奮するタイプです。
というわけで、好きな作品を『異能力の設定』という部分にフォーカスして語りたいと思います。好きなものについて語りたいだけなので、布教的な記事ではありませんが、もし興味を持たれた方がいましたら是非読んでみてください。コミックス8巻完結です。
紹介するのは『戦闘破壊学園ダンゲロス』!
自分的には二次創作をしたくなるタイプではないけど、めちゃくちゃ好き・作品なので、そのうちブログで語りたい~と思いながら幾年月が過ぎていた。
作品の主部分のネタバレはありませんが、異能力設定については中盤以降に出てくる部分まで深掘りします。
※作品について紹介するにあたり、マンガ版の画像を引用しています。
©架神恭介,横田卓馬『戦闘破壊学園ダンゲロス 』講談社 より引用
3行?でわかる!戦闘破壊学園ダンゲロスとは
異能力設定について語りたいと言っても、そもそもどういう話なのだよという話はしておいた方が良いと思うので手短にします。
要するに異能力を持った高校生が2つの派閥に分かれてブチ殺し合う話です。そういう認識で大丈夫です。
『魔人』とその能力
世界観について
多くの異能力モノがそうであるように、この作品においても異能力者はマイノリティな存在です。そして異能力を持つ者たちは『魔人』と呼称されています。
異能力だけでなく、魔人として覚醒した者は身体能力も著しく向上します。
魔人はマイノリティなだけでなく、その能力と身体能力の高さにより人々から恐れられ、差別の対象になっています。
一方で、“魔人”能力を使った犯罪事件は後を絶たず、国家権力もうかつに手を出せない状況になっている。
そんな“魔人”、異能力者が多く集まるのが物語の舞台である『私立希望崎学園』。通称『戦闘破壊学園ダンゲロス』である。…というのが異能力者とそれを取り巻く世界観です。
魔人能力
多くの異能力バトルモノがそうであるように、ダンゲロスの異能力もキャラクター個人個人が固有の能力を持っています。それは実に千差万別で、全く同じ能力は存在しません。
では、その一部を紹介します。
とにかくめちゃくちゃ速く動ける異能力
空振りしようとも風圧で全部ホームランにしちゃう能力
恋人または恋人だと思い込んでいる相手に捨てられた時、相手の視覚・聴覚にサブリミナル・メッセージを送り込む
ただし相手が自分に恋愛感情を持ち、裸でないと発動しない
「卑猥な目的」でのみ遠隔地の人物に干渉できる
相手は精液を吐き散らしながらあらゆる性病を発症し金玉が爆発して死ぬ
紹介したのはごく一部ですが、『あーあるよね、異能力モノにはその手の能力』という感じのものから、『それは何?』というものまで様々なことがお分かりいただけるのではないだろうか。個人的なベストオブ「お前はなんなんだよ」は妊娠眼です。
さて、ダンゲロスシリーズにおける異能力は何故こうもバカバカしかったり、どこかしら偏っていたり局地的だったり、性や暴力に関わるものが多いのか?これがこの作品における『異能力が生まれる仕組み』と深く結びついています。
魔人能力とは何なのか、なぜ異能力が発現するのか
いきなり異能力設定の核心になるのですが、この作品における『異能力』とは『自身の妄想や強い思い込みを周囲に強制し、現実に変えてしまう力』であると定義されています。その妄想力が強ければ強いほど、自分は特別であると本気で思い込むほどに、“魔人”への覚醒確率が上がります。
『強い妄想や願望』『自分は特別な存在であるという思い込み』『なんかとにかくすごい力や設定を考える力』これが一番強い年頃は?それは中学二年生前後である、とこの作品は語っています。“魔人”異能力に覚醒するのが最も多い年代、それこそが中学二年生前後なのです。
これによって、例に出してきたような『とにかくめっちゃすごいことができる能力』『なんかエッチなことができる能力』『嫌な相手に復讐できる能力』『しょーもない能力』etc…の全てが説明できてしまう、というのが、私がこの作品の異能力設定で最もクールでユニークで美しいと思っているところです。
「そんなバカバカしい異能力ある!?」←ある、子供の思い込み力ナメんな やんぞ というわけです。
ちなみに、『とにかくめちゃめちゃ最強でなんでもできる能力者』みたいなのは出てきません。これは私の解釈ですが、それは具体化するほどしっかり妄想し、自分がそうだと思い込むのが極めて難しいからでしょう。できちゃう人もいるかもしれない。
局地的で変な能力が多いのはきっと、単純で思い込みをハッキリさせやすいからなんじゃないかと思います。そして作中でもかなり高ランクの強い能力者というのは、それだけ妄想力や思い込みの力が強いのだと考えられます。
そういった理由で様々なタイプの異能力があるので、相性の良し悪しがハッキリしていたり、戦略性が高い。これもこの作品の面白いところです。異能力バトルにじゃんけんのような相性のある作品は他にも色々ありますが、それが『思春期に多い思い込み』を源泉にしている、というのがダンゲロスシリーズの極めてユニークなところです。
この辺りの設定を考えると、この作品が『高校生同士の全面戦争』であることにも必然性があるんですよね。幼児期や中二前後に魔人に覚醒し、数年経って脂が乗ってきた歳である高校生たち。こんなにも“激突”しそうな役者はいないでしょう。
しかも彼らはただの高校生ではない。“魔人”———、強い思い込みやそれを誘発する経験をしてきた、アクが強いヤツらです。間違っていても、歪んでいても、自分の道を主体的に突き進むバカ野郎たちが沢山出てきます。大人の保護下に無い主体性の塊みたいな若者の命をかけた殺し合い!!サ、サイコーーーーーッ!!!!
ダンゲロスが向いている人・向いていない人
以上でダンゲロスシリーズの“魔人”異能力についての語りは終了です。お付き合いありがとうございました。
さて、せっかくなのでもし作品に興味を持たれた方がいたら、用に『オススメできる人』『オススメしにくい人』を個人的に明示しておこうと思います。
『戦闘破壊学園ダンゲロス』、コミックス8巻で完結するし非常にお話の完成度が高く、マジでめちゃくちゃ面白い(個人の感性)のですが、それ以上にとにかく人を選ぶ内容です。向いてない人に薦めてゲボを吐かれる不幸は起こしたくない。
性と暴力
最初から述べている通り、この作品の根幹・切っても切り離せないところに『性と暴力』があります。
笑えるようなエッチ要素から、普通に冗談では済まないようなキッツい性暴力描写も多くあります。すんごいグロテスクな死に方するキャラもいます。まずはここですね。こういうのが大丈夫、または大好き!!って人にはオススメだと思います。現実とフィクションの区別がつく方には、是非
キャラクターの死
この作品、とにかく登場人物が死にます。死にまくります。コロっと逝きます。命が軽いです。重要そうなキャラがギャグみたいな死に方したりもします。マジで冗談抜きに人が死にます。キャラクターの死と性と暴力、それが戦闘破壊学園ダンゲロスです。エログロナンセンスの塊なのです。
なので、そういうの含めて楽しめる方におすすめです。キャラクターの死、イヤだ!!という方はやめておきましょう。イヤだけど未体験の新しい扉を開いてみたい人は読んでみても良いかもしれません。用法要領を守って服用しましょう。
ただこの辺一応抜け道はあって、詳しくは割愛しますがダンゲロスシリーズはある意味マルチバース的な世界観でもあったりします。なので、『戦闘破壊学園ダンゲロス』では反目し合ったり殺し合ったりしたけど、別の世界では仲良く生きてる、みたいないわゆる生存IFが合法(?)な作品群でもあります。(私は別に生存IFは望んでないですが、平行宇宙的なのは面白くて好き!)
ダンゲロスシリーズはボードゲームにもなってるんですが、それが正にマルチな世界線を生み出すゲームといった味わいで、作品と噛み合っていて面白いものなんですよね。
…まあ、だからといってキャラ死が苦手な人も大丈夫!読めるよ!とは言いませんが笑
別世界ではより趣味の悪いことになったりもしますし、ダンゲロス世界のマルチバースは別に救済要素というわけではないので。
余談
余談ですが、この作品のキャラクター名は非常にカオスで、ユニークで、めちゃくちゃです。
『ド正義卓也』『邪賢王(じゃけんのう)ヒロシマ』『恨み崎Death子』『一刀両 断(いとり たち)』『エース』『ヴァーミリオン海我』『ムー』『福本忠弘』『あげは』『ゆとりのひでゆき』などなど…
姓名揃ってない者、あだ名っぽいもの、それは名前なのか?という者、普通の日本名っぽい者、ダジャレやんけ!という者などなど……
更には、作者と同姓同名の『架神恭介』というキャラクターまで出てきます。
これは何故か?イカれた作者がめちゃくちゃな脳みそで考えたのか?というとそういうワケではなく、この『ダンゲロス』という作品群は元々が架神恭介氏の提唱したTRPG(ウォーシュミレーション)のリプレイという体裁を取って作られたものだからです。
なので、各キャラクターは元々は様々なTRPG参加者たちが持ち寄ったもの。…そう考えると、この変な名前群にも納得感があるのではないでしょうか。
ちなみに、ダンゲロスシリーズは『二次創作フリー、商用活動もOK』という極めて特殊な著作権規約があります。
ただし、『二次創作として作ったものが他者に二次創作されることを認める場合のみOK』となっています。お前オレのアイデア使って二次創作していいぞ!ただしオレもお前のアイデアパクるけどな!ということです。めっちゃユニークですよね。
元がTRPGであることによる『シェア・ワールド』性と、先に述べたようなマルチバース的な世界観がかなりがっちり結びついていてよくできています。ここには作者の仏教的世界観も加わり、今の形になったのだとか。(ソースはwikipedia)
とは言え私もダンゲロスシリーズは一端しか触れられていませんが。マンガ化しているシリーズしか読んだことないので、いずれは小説だけのシリーズやマンガの原作版なども読んでみたいな。
ちなみに、架神恭介氏は物語小説だけでなく実用書を執筆したりボードゲームを作ったり多岐に渡って活動しているマルチクリエイターです。一番有名な書籍は『完全教祖マニュアル』でしょうか。
『新興宗教の教祖になる方法』を非常にウィットに富んだ文章で解説しているオモシロ本です。教祖になってやるぜ!!!という方にオススメです。私は電子書籍と物理書籍両方買って読みました。頑張って教祖になろうと思います。