『絵を描く』の内訳

プロでもなんでもない趣味人の戯言的持論壁打ちなので真に受けなくていいんですけど(ここまで保険)

 


 

絵やデザインって、手で作ってるように見えて実際の内訳は【手3割】【知識(思考)3割】【目4割】くらいだと思ってる。

【目】っていうのは認知能力・客観能力・審美眼……あたりを引っくるめたもので、つまるところ自分の絵の歪みや違和感を自分で見つける力。自分なりの美しさを見いだす力。センスってここに属してる能力だと思う。

これがしっかりしていれば直すべきところが自分で判断できる、それが判断できるってことはどんどん良くしていくことができる、上手くなる。もともと目と客観能力がしっかりしてる人って本当に上手くなるの早いと思う。(ただ、客観能力が素で高いと自分の絵の良くない部分とずっと向き合うことになるので精神的にはかなり大変そう。鈍いとそれはそれで下手でも気楽に楽しく生きられるという面もある。これ学生時代のワイ)

もちろん、目で判断したものを良くするには技術や知識が必要だ。しかし、逆に言えばどれだけ知識をつけて練習などをしても、目が正しさや美しさや違和感を認識できなければ本当になかなか上手くはならないのだよな。一応これは他人に見せることである程度カバーできるけど、それでもやっぱり自分の中で『見る目』を養っておくことは大事な気がする。いくら周囲に評価されなくても、客観能力が著しく低い絵描きはそれでも自分は上手く描けてる方だと思い込めちゃうからな。ある意味無敵ですよ(これも学生時代の私のことです)

 

【知識】は意外と軽視されがちだけど、積み込めば一定ラインには到達できるので必要なものだと思う。コントラポストだのなんちゃらラインだのというよくわからん横文字概念を身に着けろという話じゃなくて、『描くときは資料を用意する』とか、デザインで言うなら『揃える、反復するができれば最低限整ったものになる』みたいなやつ。【知識】の根本ってスタートラインに辿り着くための地図、くらいのものだと思う。スタートラインの場所知らない人って意外と多いので、実はスタートラインの場所把握してるだけでけっこうアドだったりする。私はスタートラインに辿り着くまでに42.195キロ彷徨いました。とはいえまあ彷徨う時間も無駄とは思ってないんですけどね。

あとはまあ、物事には先人が積み上げてきたテンプレや型や最低限これはやっとけってのが沢山あって、それを知ってるか知ってないかで全然違うよね、みたいな。

こういうのを身につければ、センスとか直感ではなく計算式を解くような要領込でモノを作っていけるので、本当に大事だと思う。更に表現領域に伸ばしていくならそれ以外の能力も必要だけど。もちろん【目】も養っておかないと判断が難しい。講座や書籍を積み込むだけだとただ頭でっかちなだけになるので、知識入れるだけで上手くなった気にはならないように(自戒)

 

【手】はそのまま、画力とか技術とかデッサン力とか描き慣れとかなんかそういうの。絵やデザインをやる能力はこれが10割だ、と世間が思っている気がするところ。当然必要なんだけど、実はぜんぜん“それだけ”ではないところ。生成AIがめちゃくちゃ得意なところ。

 

私は10代から神絵師!みたいな人間ではないし、要領も悪いタイプだけど、だからこそ知識を持つって大事だな~とか、意図をして考えて描くって必要だな~とか、あの頃の自分の目はなんでこんなもんを完成だと判断したんだ、とかをのろ…のろ…と十年単位で気付けてきた感じ……と思う。

そういう経験があるから絵やデザインという能力は上記のような割合だと思っていて、今台頭している生成物なんかは3割ぽっちの部分に異常に特化してるだけ、という認識なのだよな。作品というものは、それを見て『よい』と感じたり『ここは直した方が良くなる』『テーマに沿うならこういう表現を選ぶと良い』など判断できる目や知識、ディレクション能力があって初めて完成するものだと思ってる。こういう部分って目には見えにくいけどめちゃくちゃ作品のクオリティや『よさみ』『伝わり方』に深く関わってるんだよね~。なんか、AIとか見ててもあんま危機感とか感じてなかったのはこういう認識だったからってのもあるんだろうな。

ただ、『良い』と判断する能力が必要なのは『良い』を求めている世界に『良い』を共有するためなので、世界が『良いもの』を必要とせず、『良いもの』を見る目が失われていくなら、【目】も【知識】も絵には必要なくなるのかな、とかは思う。『良いもの』かどうかは判断基準になく、『伝わる』ものにする必要もなく、『それっぽくできた図柄が場を埋めてくれればそれでいい』という程度の価値観が世界を覆えば、そしたらそれはほんとに無調整AI出力物でいいんだよな。そこが絵描きやデザイナーのAI支配ディストピアや。世界、『よさみ』を感じる力を失わないでいてくれよな。良いものを良いと感じ、良いと思ったものを、自分なりの価値観を大事にして、他人のそれも尊重していこうや。な、人間たち(?)

 

私からは以上です。今はこんな風に考えているけど、自分は悟り極めし者でもなんでもないただの未熟者だと認識しているので、数年後十数年後には全然変わってるだろうなと思う。