もうそろそろ上映が終わり始めているのですが、観てきました。たべっ子どうぶつ。

いやーよかったな。面白いか面白くないかで言えば、多分これより面白い映画はたくさんあると思うのだけど、本作はとことん『心に残るいい作品』寄りの良さがあった。
全然泣くつもりで観に行ってなかったのでなんか途中ボロボロ泣いちゃって自分でびっくりしてしまった。おれ今…たべっ子どうぶつで泣いてる!?途中泣き始めてからエンドロール終わるまでなんかずっと泣いてた気がする。そ、そんなつもりでは……どうなってる??なんなんだこの涙は。
上映後トイレで鏡見たらこんなんなっててビビった。泣きすぎ。
いや、泣けてしまった理由は自分の中でけっこうハッキリわかってはいるんですが。なんでボロボロ泣いたかというと、自分にとって泣けるポイントが2軸あって、その両方から板挟みに合ってどうにも涙腺が休まる暇がなかったというか。その2つについてこの感想で触れていきます。
理由①はネタバレなしで、理由②はネタバレありです。なのでこの記事は途中まで未見でも一応読めると思います。
泣けちゃったポイント①(ネタバレなし)
なんというか、この作品、本当にちゃんと作ってあります。ちゃんと作ってあるという事実になんか無性に泣けてしまったんですよね。
これは私の先入観もあって、正直言うとたべっ子どうぶつザムービー、SNSでバズるための映画だと思っていたんです。映画化の報はかなり衝撃を持って迎えられていましたし。でもやっぱりなんか出オチ的な印象が拭えなかったんですよね。『たべっ子どうぶつ映画化』の11文字だけで面白すぎる。しかしそれ以上になるイメージがあまり沸かない。というか。
私はあまりSNSでのたべっ子どうぶつの動向をチェックしていたわけではないので、その後映画公開までの動きで知っているのはプロ野球とコラボして着ぐるみが球場に来ていたことくらいでした。
で、実際に映画を観てみたわけです。滑り込みだけど。するとですね、ちゃんと作ってあるんですよ。内容が。SNSでバズってたべっ子どうぶつの宣伝をして知名度上がればオッケー、みたいな舐めた姿勢では絶対にできない作品に仕上がっていました。ギンビスさん、本気でたべっ子どうぶつの映画を名作として残そうとしてるんだ…と思った。それくらいよかったし、じんわりと心に残り続けるような内容でした。
映画なんて媒体を作るんだからちゃんと作られるのは当たり前だと思う人もいるかもしれませんが、いや、当たり前じゃないと思う。特に現代って、SNSでいかにバズるかがすごく重要になっている雰囲気がやっぱりあって、“バズり逃げ”というか、バズって知名度さえ上がれば商業的には成功!みたいな作品やメディアは存在してしまっていると思う。悲しいことに。
たべっ子どうぶつザムービーってマジで初報の印象は完全に『バズらせにきてる』だったんですよね。実際、バズは狙っていたと思います。商品のPRのために作った映画であることは間違いない。なんか映画冒頭でアイドルライブみたいなのやってるのもバズ絵面すぎるし。映画中定期的に「ここで切り抜いてバズりたいんだな」って面白カットもあったし。しかし、しかしですね、その上でギンビスはこの映画をしっかり作り込んで、『よい作品』として公開した。これ、この事実が、すまん、どうしようもなく泣けてしまう。トヤマの泣きポイントなんかおかしいよ。現代SNS社会に変なスイッチ作られちゃった。
なんか、自分の無意識の中にうっすら危惧があったのでしょうね。バズるのが今商業的には一番強くて、そうなると作品がどんどん『バズる』ように作られていくのではないか。『バズる』というメソッドだけで作られた、バズ以上に心に残らない作品がもしかしたら増えていってしまうのではないか、という恐怖が、あったんでしょうね。あんまり強く意識したことはなかったけど。だからギンビスがバズり逃げしないコンテンツを真剣に作ってくれたことにわけわかんないくらい泣けてしまったんだと思う。
“今この瞬間”バズって数日後には忘れられてしまうコンテンツじゃなくて、見た人が10年後にも思い出してしみじみ良かったなと思えるような作品を作っている。うれしすぎるよ、ギンビスさん…
ギンビス、本当に“たべっ子どうぶつ”で最高の映画を作りたかったんだな。これはネタバレになるのでボカすけど、作中で“たべっ子どうぶつ”を最高に生かした展開をするところがあって、なんかウワーーーーってなってしまった。“たべっ子どうぶつ”で良い映画を作ろうと真剣に取り組まないとあの展開は描けないよ。泣
あと、作中にたべっ子どうぶつだけじゃなくギンビスの他のお菓子がでてきたのもよかったし、ギンビス以外の他メーカーのお菓子キャラクターが友情出演してたのもマジでよかった。湖池屋さん、やおきんさん、よっちゃん食品工業株式会社さん、オリオンさん、他、競合他社映画に協力してくれたお菓子会社のみなさん、ありがとう……作中世界観とも合わさってあまりにもピースフルすぎる。
以下ネタバレありの泣けちゃポイントの話です
泣けちゃったポイント②(ネタバレあり)
マッカロン教授とゴッチャン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(絶叫)
序盤、「なんでたべっ子どうぶつの敵対者がわたあめ?」「わたあめに何の恨みが?」と思ってたんですが、いやあ、わたあめでしたね。わたあめか、もしくはりんごあめだったな。
お菓子という、『大人から子供に与えられがちなもの』を使って『親から欲しいものを与えられなかった人』を描いているのは見事なテーマ回収だし、そんな人が初めて自分で手に入れたお菓子がわたあめなのも「あ~~…」ってなって良すぎる。普段店頭にはあまり並ばない、お祭りという特別感の象徴。子供が大人から買ってもらうイメージが(普通の駄菓子よりも)強いのもあって、チョイスとしてはかなり『それしかない』と感じられてよかったな~。
『お菓子』という概念を抽象化したとき、この作品は『人々を笑顔にするもの』と定義していて、マッカロン教授はそれを奪わんとする敵で、うーん、本当に構造がキチっとしている……。
正直マッカロン教授がラスボス化したとき、「あ、そういう感じなんだ」ってちょっと思ったんだけど(すごいわかりやすいラスボス反転したなってなった)その後の描写が盤石すぎて納得感すごかった。予想しやすい・分かりやすい展開であっても、そこに手堅く地盤固めをして説得力を出してくる、いい意味で教科書通りの物語づくりをしているよなあ。
教授が今のような道に入ってしまったのがゴッチャンが軽い一言からっていうのも「うああ~~」ってなってよかった。ゴッチャンの後悔とか、本当はそんなつもりじゃなかったとか、ゴッチャンはみんなを不幸にするんじゃなく教授を笑顔にしたかったんだよとか考えるだけでなんか泣いてしまってよくない。なんでこんなに泣いちゃうんだよ!!!(しらないよ!!!)
もう普通にエンディングの一枚絵とかでもダバダバ泣いちゃってめちゃくちゃだよ。ていうか、冒頭のアイドルシーン見た時に「あ、これ全部が一件落着したらまたエンディングでライブして終わるみたいな感じなのかな」って思ったら全然そんなことなく普通にしみじみさせてきて、いい意味で期待を裏切られて嬉しかった。アイドル、マジでバズのために用意されたみてえな設定だったけどノイズにはならなかったのがよかった。人々を笑顔にするという共通項でアイドルとお菓子をくくってるって意味では理解できるし。
ゴッチャンとマッカロン教授が幸せになれたの普通に嬉しすぎる。時間という意味で教授が失ったものはめちゃくちゃ大きいと思うんだけど(おそらく人生のほとんどを人々の笑顔を奪うことばっか考えてきた)この先死ぬほど幸せになってくれ。
キャラの幸せを素直に嬉しがれる健全な精神になれるいい映画。悪いことした人が普通にハッピーになってもええかと思えるのはスイーツランドがやんわり現実離れしているおかげだと思う。
あと、一番好きなシーンの話!!!!やっぱりペロがたべっ子どうぶつを復活させるシーンだよなあ!!!!!!なあ!!!!!!!!!大大大大名シーン
あそこ本当によすぎる。たべっ子どうぶつじゃないとできない展開すぎてマジで感動してしまった。子供がおいしく食べて楽しみながらカンタンな英語が学べるお菓子!!!!これがたべっ子どうぶつです!!!!!!!!のメッセージすぎる。ストーリーとしても商品PRとしても10000億点満点だろこれ。こういう『メタ的な目的(販促とか)』と『作品単体で見た時のストーリー性やテーマ性』が噛み合ってる様が一番最高。結局作品は何か目的があって作られるものだから。そのバランスの取り方がいい作品ってほんとうに良いんだわ。ああ~~
名作すぎる。強いて言うなら、わにくんだけずっと微妙に蚊帳の外だったのが気になったくらい。あれなんで?序盤はひよこちゃんとセットで離脱してたからキャラ数調整かなって思ったけど。たべっ子どうぶつわにくんファンがいたらモヤっちゃうよ……😰って勝手にオタクの気持ちになってしまった。たべっ子どうぶつのわにくんのオタクがいるかどうかはわからないけれど(「こんなキャラにファンなんているわけねえよな!w」の思い込みによって好きキャラを蔑ろにされ傷つけられてきたオタクゆえの想像力)
あと映画に起用されてないたべっ子どうぶつのファンはぺがさすちゃんにちょっと複雑な感情がありそう。
…この辺の話は置いておいて
物語として良かった部分、やっぱり抽象化の巧みさかもしれない。たべっ子どうぶつやお菓子というモチーフの表層をなぞるのではなく、その本質はどこにあるのかを考え抜いてテーマ性・物語が作られているというのを強く感じられた。あまりにもちゃんと作られている。あまりにもちゃんと作られていてすごすぎる。これめっちゃ名作ですよギンビスさん……ありがとうございます。