タイアップ系楽曲の歌詞について考えていた

素人考えだし、最初から最後まで個人的な感性の話しかしていない(いつもの保険)


 

アニソンやキャラソンにおける『好きな歌詞』と『そんなに好みじゃない歌詞』の違いがなんとなくわかってきた。たぶん抽象化の上手さの差なんだろうな。

ちゅうしょう‐かチウシャウクヮ【抽象化】
〘 名詞 〙 個々の具体的なものから共通の属性を抜き出して、一般的な理念をつくること。
(コトバンク)

 

例えば、私はリコリス・リコイルのED曲の歌詞が好きなんだけど(メロディも歌い方も好き)
これはすごく抽象化が巧みな例だと思う。

リコリス・リコイルの主役である少女たちは『孤児を養成して殺人技術を身に付けさせた少女暗殺者「リコリス」』である。これは具体
この具体設定の抽象度を上げると『ある世界しか知らない、その世界を全てだと思っている少女』になる。

そして、リコリス・リコイルのストーリーはそんな少女が出会いによって視野を広げたり、自分のやりたいことを見つけたりする物語という側面がある。
『ある世界しか知らない、その世界を全てだと思っている』『外の世界に連れ出される』という抽象度の上げ方をした上で、ED曲『花の塔』の歌詞ではそれをラプンツェルに見立ててるっぽいんだよね。ラプンツェル有識者じゃないから原典とディズニー版どっちの色が濃いかはわかんないんだけど

「花の塔/さユり」の歌詞 って「イイネ!」
「君が持ってきた漫画 くれた知らない名前の…」勇気をもらったり、泣けたり、癒されたり…、この歌詞をチェックしてみて!人の心を打つ「言葉」がぎっしり!

窓に飾った絵画をなぞってひとりで宇宙を旅して
それだけでいいはずだったのに
君の手を握ってしまったら
孤独を知らないこの街には
もう二度と帰ってくることはないのでしょう

リコリコの設定を抽象化した上でラプンツェルとの共通点を見つけ、その上でその共通概念を言語化して歌詞に落とし込んでいる、ように見える。
すごい心地いいアニソン歌詞なんだよな~~~~これ。好きだな~~~~。美しいな~~~~~~~~~。

 

他だとテイルズオブジアビスの『カルマ』なんかが分かりやすい巧みな抽象化の有名な例だな~と思う。『人体複製技術が存在する世界観。オリジナルとレプリカの関係性、共存や居場所問題』というストーリー具体をうまいこと抽象化して主題歌に落とし込んでいる。

「カルマ/BUMP OF CHICKEN」の歌詞 って「イイネ!」
「ガラス玉ひとつ 落とされた 追いかけて…」勇気をもらったり、泣けたり、癒されたり…、この歌詞をチェックしてみて!人の心を打つ「言葉」がぎっしり!

なんとなくだけどBUMP OF CHICKENさんはこういうのめちゃくちゃ上手い印象ある。アカシアとかもえげつない作品文脈理解と抽象化をしているし。

他にも色々あるけど好きなタイアップ曲の好き抽象ポイントの話をし始めるとキリがないので2例で我慢しておく。

 


 

逆に、全く抽象化の過程を挟んでいない歌詞のこと私は『あらすじ歌詞』って呼んでるんだけど
例えば『美男高校地球防衛部LOVE』の箱根有基のキャラソンがマジでこれで
(私は1期の箱根有基が好きなのでキャラソンを買ったことがあるのである。2期以降は…ちょっと記憶がない。)

箱根有基(山本和臣) 1・2・3でLOVE&JOY!! 歌詞&動画視聴 - 歌ネット
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突然!?いやコレ必然!変身だ!
アリガチでナリユキなスーパーヒーロー
んなこと言ってる間に怪人だ!
なんか超楽しそう!戦うぞ!

……ただのあらすじすぎるだろ!!!!!!!!(台パン)
抽象化が一切されていない、アニメでやった筋をなぞるだけの歌詞、キツいよ~。キャラソンアニソンにあらすじ朗読は求めてないんよ!!!と私は思ってしまう。このキャラソンが世間的にどういう評価なのかは知らないです。

キャラソンは主題歌に比べるとコテコテにキャラの具体に寄っていても成立する領域の楽曲であるとは思うんだけど。それにしたってもうちょっと、こう……。

 

私の愛するコンテンツであるボーイフレンド(仮)さんもキャラソンを多数出してた。出たキャラソンは発売時期で大まかに第一陣と第二陣に分かれるんだけど、個人的にはけっこう歌詞の出来に差があったと感じる……。第一陣の曲は全体的に『キャラソンらしいキャラ固有感を出しつつ、それなりに抽象化している』という塩梅ですごく好みだった。一方の第二陣はちょっとキャラの具体に極端に寄りすぎていてコテコテすぎてすぐ聴き飽きてしまう感が否めなかったんだよね~。(全部がそうではないので例外楽曲はあるが、全体の傾向として)

まあ一番好きな箱のグループキャラソンはもうそれだけで脳が溶けるのでどんだけコッテコテの具体盛りでもヘビロテできちゃったんだけど。

「青春マッスル!/遊馬百汰(水島大宙)・東雲巽(関智一)・皇アラン(高梨謙吾)・瀬名竜之介(阿部敦)」の歌詞 って「イイネ!」
「はしゃぎあってたいんだ ずっと 盛り上…」勇気をもらったり、泣けたり、癒されたり…、この歌詞をチェックしてみて!人の心を打つ「言葉」がぎっしり!

私が脳を溶かして1500回聴いた曲
でもこれは贔屓目だけどコテコテながら聞き苦しい歌詞ではないと思う(メロディ込で)
本当に聞き苦しかったら流石に脳溶け補正あっても1500回転はできないし

 

あらすじを述べるだけの歌詞・キャラが具体的な自分語りしてるだけみたいなコテコテの歌詞は自分の中ですぐ賞味期限がきてしまう、って感じなんだろうな。自分の感性だと。


 

ただ、固有名詞盛りのあらすじ・具体寄り歌詞だから全部悪いとも言えなくて、あらすじ歌詞でもしっくりくる例も普通にある。特に昔のアニソンとか

「宇宙戦艦ヤマト/ささきいさお」の歌詞 って「イイネ!」
「さらば地球よ 旅立つ船は 宇宙戦艦ヤマト…」勇気をもらったり、泣けたり、癒されたり…、この歌詞をチェックしてみて!人の心を打つ「言葉」がぎっしり!

さらば地球よ 旅立つ船は
宇宙戦艦ヤマト
宇宙の彼方 イスカンダルへ
運命背負い 今 飛び立つ

超代表例だとこういうの。普通にめっちゃあらすじ歌詞じゃないですか。なのにめちゃくちゃ心地よく聴ける。何が違うんだろうな~。これに関しては言葉の美しさやテンポ感とかだろうか?
もしも宇宙戦艦ヤマトの歌詞が「彼らは地球を旅立つ~乗り込んだ船の名前は宇宙戦艦ヤマトだ~~。宇宙の彼方にある~~イスカンダルへ向かい飛び立った~~~。乗員は重大な運命を背負っている~~」だったらクソダサだもんな。サブイボ立つくらいクソダサにしちゃったけど、実際これくらいダサいあらすじ歌詞、全然ある。(イヤーッ!)

『主主主』タイプの歌詞はある程度例外なんだろうな。主主主というのは某アニソンラジオで使われていた用語で、『主題歌主題歌した主題歌』のことです。

主主主とは何? わかりやすく解説 Weblio辞書
主主主とは?ウィキペディア小見出し辞書。 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 05:45 UTC 版)「青春ラジメニア」の記事における「主主主(しゅしゅしゅ)」の解説「主題歌主題歌した主題歌...

ニッチ用語だと思ってたけどウェブリオに記事あるんだ……

 

それに、アニソンじゃないけどサンホラとかの物語音楽とか、ミュージカルの曲なんかもある意味あらすじ歌詞だと思うけど全然気にならないもんな~。サンホラはそもそも歌詞自体がコンテンツの原典だからかなり別枠だと思うけど。

あらすじ歌詞をやるなら圧倒的に洗練された言語センスが必要なんだろうな。いや普通の歌詞だって言語センスの塊だけど。なんか具体的であればあるほどより洗練された言語能力が必要なように見える。

 


 

私の人生における音楽体験は8割くらいがアニソンゲーソンキャラソン他タイアップ曲なので、歌詞の良し悪しと作品関連性は切り離せないという認識でいる。

そのうえで、好みの歌詞とモヤモヤする歌詞があって、何が違うんだろう~~~と思ってたんだけど最近ようやっと言語化できるようになってきたかも……という話でした。

あと、これは完全に余談だけど自分が知っている作品の主題歌の『歌ってみた』でその作品文脈を完全に無視していたり、オタクがイメソンで~すと言って取り込んでいるのを見るとモヤつくのも、多分この辺由来なんだろうな。タイアップ曲は作品のために作られた歌詞なので~~~~~~~!!!お前らのためのものではな~~~~~~い!!!(厄介オタク)

ただ、歌詞が抽象化されているということはその作品以外の人やモノにも共通点を見いだせるということで、文脈取り込みやイメソン化がしやすいとも言えるのよね。私も特定のタイアップ曲を聴きながら別の作品を想起することけっこうあるし。ただそれを大声だしてイメソンで~~~~~~~~す!!!!!!!と触れ回る手つきはなんか下品でリスペクトに欠けるからしたくないんだけど。重ねるということ自体は悪いことじゃないと思う。

 

アーティスト追いで楽曲を独立した作品として聴いている人とかはどういう部分で歌詞の良し悪しを判断しているのだろうか。そういう曲において「あのアーティストは歌詞がダサい」みたいな言論を見てもピンとこないことが多いんだよな。多分人生経験によるアンテナが全然立ってない。タイアップ曲の歌詞アンテナに全振りしている。

 


 

補足1

▲抽象化の概念がざっくり提示されていて好きな動画です(好きチャンネル・宣伝)

 


 

補足2

花の塔の歌詞関連は私の勝手な読解なので、実際のところさユりさんがどういう意図で書いたのかはわかりません。