徳甲一族 英霊の歌

マンガ描いたりしつつ俺屍Rをじっくりプレイする記録

一族あと語り / 21 燕九朗

1年越しの徳甲一族キャラ語り 第21回になります。
これ何?という方ははじめにを御覧ください。

4月になりました。ここからグングン文字数が伸びていくので、更新間隔も少し開きつつにはなるかと思います。一応今月中には終わる予定で準備中

燕九朗-沿革

 

凪左助と片羽ノお業の子

幼少期

燕九朗の母は、その『子』の姿を確認した後に目を細め、ゆっくりと優しく、彼を抱擁した。

彼はまだ生まれたばかりで、一族と朱点童子、そして目の前にいる女の関係を学習してはいない。しかし、彼女の『自分じゃない何かを見ているような眼差し』に嫌悪感を覚えていた。

あの女以外の天界人たちも嫌いだった。あれは、道具か何かを見ている目だ。

地上に降りて対面した父も好きではなかった。そもそも、あの女を交神の儀に選ぶような男だ。期待はあまりしていなかったけれど。

父は、一族のためだとか何だとか言って燕九朗に修練や勉学を促した。息子の教育によって何かしらの過ちを軌道修正しようとしていることが透けて見えて、嫌だった。

 

『自分を思い通りに使えると思っているヤツ』や、『思い通りにしようとしているヤツ』がとにかく嫌いだ。燕九朗は、そういった機微を感じ取ることに長けた、聡い子供だったから。

だから彼は、誰の思い通りにもならないように振る舞った。指示を無視し、相手が予想していないような行動を取ってみたり。京の民と関わることで、人々のことや噂なども沢山仕入れてみたり。

そこで得た知識を使って、試しに父が最も嫌がるであろうことをやってみたりもした。
父は激怒。その結果、平手打ちまで食らってしまった。まあそうなってもおかしくはない。怒ると思ってやったことだ。

ただ、その日から父が少しだけ変わった。必要なことは伝えるし、指示もしてくる…が、あまり干渉してこなくなった気がする。

ついに息子を諦めただろうか。見放し、何を言っても無駄と考えただろうか。そうであっても構わない。…ただ少し、見放しとは様子が違う気もするが。

 

父の死去

燕九朗たちの来訪以降に再開された『髪切り』は、赤を筆頭として経験を積んでいる3人に加え、戦の才があり将来有望な更紗や揚羽を同伴させて進められていた。

攻守共に難があり、その上指示を聞かない危険性のある燕九朗は留守番。燕九朗から見ても妥当な判断だ。
戦を好んでいるわけでも、一族に貢献したいと思っているわけでもない彼に不満は無かった。

 

だが、父・徳甲凪左助最後の出陣…『髪切り』において、彼は燕九朗の同伴を提言した。

更紗と揚羽が一度ずつ参加した戦いだ、予想外という程では無かったが、賢明とは思えない。この男、まだ自分のことを諦めていないのか。
それとも、父親としての責任でも取っているつもりなのだろうか。

そもそもこの男、本心では鬼の巣窟なんかに向かいたくないと思っているはずだ。最後のひと月という限られた時間……本当は京の町にいたいんじゃないか?
とことん損な性格してると思うよ。俺を連れて行って何を感じさせたいのか知らないけど、そんなの無駄なのに。

九重楼での『髪』戦、そこで父は死んだ。正確に言うと、死を選んだ。残りの命を全て使い果たすような『ヲロチ斬り』の力を使って。
はっきり言って、別にそんなものを使わなくても余裕で勝てそうだった。赤やばな奈がかの鬼を圧倒していたから。

父が死ぬ直前、最期に語りかけた相手は燕九朗だった。無茶せず生きて帰れば、床に伏せていたとしても『例のあのヒト』に見守ってもらったり、そういうことができただろうに。

 

…父は愚かだが、馬鹿ではない。
あの力を奮えば、残り少ない命が散ることなど承知していただろう。

これではまるで、『最期に言葉を交わす相手』を『息子』にするために、ここで燃え尽きることを選んだようではないか。

そんな状況を作っておいて、父は燕九朗に何も望まなかった。
ただ、『生きる場所を見つけろ』という言葉と、死にゆく背中の記憶が燕九朗の中に残っただけである。

 

新しい時代と、へんてこなおじさん

父の後を追うかのように赤とばな奈がこの世を去り、一族にとっての『時代』が変わった。
これからは、新当主・更紗主導で戦っていくことになる。

燕九朗は更紗や揚羽のことが嫌いではなかった。彼女らは他者を自分の思い通りにできると思っていないし、押し付けがましい望みを持っていないから。

…更紗はどちらかと言うと『誰かの求めた姿』になることに必死なようだが。燕九朗には関係のないことだった。

必死にやってるから、揶揄った時は面白いように反応してくれる。逆に揚羽は冗談や揶揄の全く通じない男で、これはこれで面白い。

 

一族以外にも気になるヤツがいる。
ご先祖の代から懇意にしていると言う円山町の元不良、あだ名は『大将』
神や鬼とは関係がない、ただのオジサンだ。

勘付いた時は少し驚いたが、この薄汚い一般人のオジサンは、父の想い人であったらしい。

人と人の関係に首を突っ込むほど趣味は悪くないつもりだし、その辺りは燕九朗にとってどうでも良かった。だが、父を変えたらしいこの人物には少し興味がある。

よくよく見ても何も特別なところはない、ただのオジサンだ。貧乏らしく身なりは整っておらず不潔で、部屋は何か匂って不衛生。作る飯はかなり不味い。
オジサンの方は父に対してああいった類の情は無さそうだが、父や一族に対する思い入れは非常に強いようだ。

 

特別な力を持たず、人より勝るものも特に無い。寧ろ『不良として他者に危害を加えていた過去』という、言うなれば罪を抱えた人物だ。荒れた世であった故に裁かれなかったようだが。

進んで関わろうとする人間の方が珍しい、そんな男だった。

…しかし、この男には、他の京の民や天界の連中が当たり前に持っている『一族への押し付けがましい望み』を感じない。
なるほど、こんな身なりや経歴でも『一族なら』彼に特別な情を抱く者が出ることに合点はいった。

『変な一族』に好かれるのは、『物好きで変な奴』ということだ。

 

交神

更紗が目標として大仰に掲げていた『髪切り』が済んだ。正直言うと、けっこう楽に勝てたように思う。
後は交神の儀で子供を作って次世代に渡せば役目は終わり。…だそうだ

 

そうして『雷王の血を得る』と張り切って天界に向かった更紗が、交神の儀を成せぬまま帰ってきた。

何が起こったかは知らないが、想像はできる。あれだけ自尊心を拗らせている更紗と、高慢な天界連中の中でも更に位の高い、王と名乗る神…この二者が出会えば、こういうことも起こりうるだろう。

ただ、気落ちの仕方が尋常でなく、まるで別人になったかのような姿である理由までは良くわからなかったが。

 

一旦更紗の交神が保留となったため、揚羽が交神の儀に向かうことになった。屋敷には燕九朗と更紗が残っている。
これまでのように揶揄ってみても、何の反応もない。壊れた人形のようだ。
燕九朗は悲しいとは思わないし、神への憎悪なども特に湧かなかったが、面白くは無かった。

天界連中の期待や望みに応えようとして潰れた更紗と、一族を思い通りに使いたいくせに彼女を拒否した天界。なんだ?この構図は 馬鹿らしいにも程があるだろう。

 

元々、燕九朗は交神して子孫を残すことに左程意義を感じてはいなかった。

この状況で改めて考えてみる。燕九朗の子も、恐らく自分たちと同じように天界に役目を押し付けられ、京の民に期待され、屍として一族の礎になることを望まれるだろう。

その生き方に殉じようとしたり、反抗したりしながら生きていくことになる。そんなものの繰り返しを思うと反吐が出た。ご先祖たちは、よくここまで素直に血を繋いできたものだ。

 

徳甲燕九朗は、誰かの思い通りになることが大嫌いだった。

 

天界を訪れた燕九朗の前で、女が貼り付けたような微笑みを浮かべている。

天界最高神・太照天昼子。一族にくだらない戦いをけしかけた張本人であり、その戦いに終止符を打てるかもしれない『圧倒的な力』を持つ存在。そして、燕九朗にとっては異父姉でもある。

父の幻影などを使って誘ってくる辺り、燕九朗が今まで出会ったどんな者よりも性格が悪い。とんでもない食わせ者だ。一方で、天界の連中を束ねる者として、これ以上の人材はいないだろうことも察することができた。

 

昼子は一族が戦いを終わらせることを望んでいて、燕九朗の考えていることも何となく解っているようだ。彼なら天界最高神とも魂の波長が合うだろうことも。

自らと交神可能な一族が現れた。ならばさっさと子を成して朱点童子を倒して来い、ということだ。利害は完全に一致しているのだから。

しかし燕九朗は納得いかなかった。自分を意のままに動かそうという目の前の女に対して抵抗があったことは確かだ。だがそれと同じくらい、『天界最高神の子』として産み落とされる己の血族を思って辟易した。

燕九朗は考えた。脳裏にいくつもの選択肢と可能性、予測できる結果が浮かんで消える。

 

そして彼は、眼前で笑みを浮かべる女に対して二本の指を立てた。

 

まつり来訪

警告はされていたし、予想もしていたが、想像を絶する困憊ぶりだった。

 

燕九朗は“あの”天界最高神と波長の合う稀有な一族であったが、そんな彼と言えど二度も魂を交わらせるとなると、恐ろしいほど気力を消耗してしまう。『天界最高神・太照天昼子』は、それだけの力を持っていたのだ。

気がつくと彼は屋敷の布団で横になっていた。どうやら、自力で帰還することはできなかったらしい。
『イツ花』が言うには、二度の交神は無事に完了し、来月以降子供たちが来訪する予定になっているそうだ。

まずは、自分がどの程度動けるのかを確かめてみた。立ち上がり、歩くことはできるが、これまで感じたことがない程に体が重い。少しの動作でとんでもない疲労感が蓄積され、意識を保つだけの活力がすぐに底をつく。

それはまるで、底の抜けた桶に入った水のようだった。

 

 

燕九朗の“生きていられる”時間がどんどん短縮されていく中、一人目の子供がやってきた。

父の容体にも動揺することなく、淡々とした態度。迷いのない目的意識、そして溢れんばかりの才を持つ娘だ。

きっと、天界も大いに期待をかけ送り出したことだろう。彼女は、それを全うできるだけの強さを持っている。人間離れした雰囲気の眼差しも相まって、正に戦って使命を果たす為に生まれたかのような子供だった。

この子ならどんな武器でも使いこなすことができるだろう。揚羽の母が使っていた槌を与えれば鬼の全身を粉微塵にするだろうし、更紗の刀を継げば彼女を超える剣技を身につけるであろうことが想像できた。

燕九朗は人を見ることが得意だったから。

 

燕九朗が第一子に扇を持たせると告げた時、皆が驚いた。
歴代でも燕九朗しか就いたことのなかった『踊り屋』とは、力なき者が技を磨くことに特化し、戦いを補助する職と考えられていたからだ。

無論、娘に近接戦闘をして欲しくないだとか、自分と同じ職に就けたいだとか、そんな理由ではない。

この、まるで戦うために生まれたかのような娘なら、予想を裏切るような踊り屋像を作り上げるかもしれない。それが一番面白いからだ。

 

もしもそんな風にならなかったとしても問題は無いだろう。既に揚羽の息子・一番星というとんでもない才能を持った子供が次代の前衛を任じられている。この娘が補助役に回っても、十分やっていけるだろう。

自らの子も揚羽の子も才能に溢れている。ここにもう一人の『天界最高神の子』を加えれば、恐らく資質だけならば歴代最高級の部隊になるはずだ。
朱点童子打倒の可能性は十分にある。

大江山事件のように、偽の認識を植え付けられている可能性もある…が、燕九朗にはなんとなく解っていた。
朱点童子は歪んでいるが、あからさまな嘘はつかない男に見える。彼が最後の決戦場と言うならば、きっと“そう”なのだろう。

 

正直なところを言うと、次代で駄目ならその次、その次も駄目なら更に次…そんなことを考えるほど、燕九朗は先祖や一族の血を尊んではいなかったし、この戦いと連鎖はくだらないと考えていた。この子供たちで駄目ならそのまま滅んでも良いとさえ思える。

流石にそんなことを口にしたことはないし、自分がいなくなった後のことを決めるのは子供たちだ。好きにすれば良いと思うが。

だから、燕九朗は『次代で駄目だった時』のことは考えない。

次代で呪いが解けた時のことを考えた。
天界の、昼子の思い通り朱点童子を打倒したとする。それで全てが綺麗さっぱり片付くか?そんな訳がない。

天界がどう動くか分からないし、それに…この一族は『呪いが解けた後の生き方』なんてものを知らない。燕九朗も揚羽も更紗も、人生2年未満のつもりで戦い、標を立て、生きてきた。

だから、燕九朗は『戦いのない生き方』を教えることができないのだ。

 

燕九朗のお願い

まつりが来訪してしばらく経ったある日、燕九朗はこれまで測ってきた行動可能時間を逆算して屋敷を出た。
久しぶりの外出だ。真冬の寒さが予想以上に体力と気力を削りにくる。
『あそこ』に辿り着く前に倒れでもしたらお笑いだ。

重くなる足を引きずって、重なりたがる瞼をこじ開け、なんとか目的地に到着した。木のオンボロ引き戸は石のように重い。まあ、ここまで来れば『アイツ』は自分を担いででも屋敷にやってくるだろう。これくらいの信用には応えてもらわなくちゃあ、話にならない。

燕九朗は壁にもたれかかり、意識を手放した。

 

次に燕九朗が目を覚ました時、その身は予想通り屋敷の布団の中にいた。周囲は暗く、夜であることは直ぐに把握できた。

側を見ると、円山町の『大将』がうたた寝をしている。どうやら、燕九朗が目を覚ますまで待っていたらしい。

燕九朗は思わず笑ってしまった。燕九朗は何も言っていない。自分を屋敷まで運べとも、自分が目を覚ますまでここにいろ、とも頼んではいない。
なのに、この男はここに居る。燕九朗をここまで運び、目が覚めるまで待っている。

きっと、自分が心配で仕方ないのだろうな。そう思うと、そのことが面白くてたまらなかった。

 

「生きる場所を見つけるんだ」

 

たいそうで抽象的な言葉だ。
…そうだな。あんたがそう言うなら、あんたが作った『縁』利用させてもらおうじゃないか。

 

 

そうして燕九朗は、大将に子供たちの世話を依頼した。期間は『燕九朗が寝こけている間』である。月賦として与えるよう、イツ花には多めに金を預けておいた。

 

平凡な人生

二人目の子供がやってきた。燕九朗にも昼子にも似ていない、何というか平凡な子だった。

人並みに不安を持ち、人並みに虚勢を張り、根は優しい。揶揄うと大きな反応を見せる。そして、親である燕九朗に愛着を持っているようだ。

自分と昼子の遺伝子を分けてこんな子供が生まれるのか。燕九朗は少し面白い気持ちになった。
どちらかと言うと大将の方が彼に似ていると思えるくらいだ。顔は俺似だけど。

自分が寝こけている間、相当やんちゃをして大将を振り回しているようだ。その光景は想像に易かった。

 

一族は、この子供たちはどうなっていくだろう。
燕九朗は何も望んではいなかった。朱点童子を倒すかどうかも、あのオジサンを今後どうするかも、子供たちが決めることだから。

ただ、身内や神以外の人間と関係を持ち、彼のような存在を知れば、考えられることはおそらく増える。その結果予想もしないような答えを出せたりしたら、最高に面白いじゃないか。

俺はただ、その入り口を作ったり、仕掛けを置いてみただけだ。子供たちに望んでいる何かがあるとすれば、『誰かの思い通りにならない、やりたいことをしてほしい』ということなのだろう。

その結果どこか遠くに去りたくなるならそれでも良い。『平凡な人生』なんかを掴みに足掻くのも、悪くはないだろう。

 

よく考えてみれば、『平凡な人生』って全然平凡なんかじゃあないな。一族にとっても、京の連中にとっても。

『それ』は勝ち取るものだ。必死になって、鬼を斬って、血反吐吐いて、思考を巡らせ、山程屍を越えて。しかもそれは全て子孫のためで、『自分』はそうなれるわけじゃない。

ふと父の最期の背中が脳裏に過る。あんたはどう思う?

 

そんなことを考えていると、なんだか可笑しくなって、少し笑えた。

 

 

燕九朗について

誰も本当の心は知り得ない

『そのヒト目線の沿革』で燕九朗の内側を掘っていくの、徳甲で一番ドキドキしました。

本編中だと心の内を語らないタイプの登場人物だからだろうか(モノローグとかほとんど無かったんじゃないかな…?)

ただ、そういう風に『内面を語らない』存在として捉えていたし拘っていたので、彼目線の文章書いてると『なんか一種の二次創作みたいだな…』って思っちゃいますね。

 

例えば大也とかの場合は『描いてる時もこういう裏側の思考や経験を想定していた、でも語らなかった』って感じなので『終わって時間経ったから話せること』という形で語ったじゃないですか。

でも、燕九朗って正直言うとそう言うのはあんまり考えて描いてなかったんですよね。(何も考えてない・意図してないって訳じゃないんだけど…)

彼の思考の方向性のようなものはわかる、だけど彼の本心は誰にも分からない。私はそういう風に徳甲燕九朗という人を見ていたし、そういう風に描いていました。

 

それが特に顕著なのはエピローグ③の回想かなあ。

ここの燕九朗の心は本当に今も分からないんだよね。忘れてくれて良いよって思ってるのか、忘れてほしくないのか、私にも分からないのです。それが燕九朗の燕九朗たるところだと思っているから。

エピローグのプロットやト書き打ってる時も『ここ燕九朗の本心どうなんだろうな』『ていうかどういう顔してるんだろうな それは描いてみないと分かんないな』って感じだったし。

燕九朗、プレイして補完創作してる私にすら見せない本心があるんだよ。そういう部分が彼という人物の本質のように思っていて。

 

…だからこうやって彼の目線で彼の内面をいっぱい描いてると「ほんとにそうか!?」「トヤマの妄想じゃないか!?」みたいな感覚に陥る。一族の補完創作なんてそもそも妄想のはずなんだけどね…笑

だから燕九朗目線の語りに限っては『※自分で描いたもののセルフ二次創作物です』って付けたくなってしまう。『補完創作した私』の語りであってほしくないんだよな。

何を言ってるんだ?伝わるだろうか…

 

彼の目に映る人々

それはそうと、燕九朗目線の周囲人物評を妄想するのは本当に誰よりも楽しいです。

凪左助関連は勿論、同期二人を割と気に入ってるところとか。

赤に対しては『親が赤さんなら良かったのに』とか言いつつ本当は絶対無理だと思ってそうなところとか(赤、弁と論が通じないので)

ばな奈とかは好きでも嫌いでもないけど、舌回るスピードが違いすぎるからタイマンで会話はあんましたくないって思ってそう。

緋ノ丸やホッシーが来た時はすでにダウンしてたからほとんど関わり無いだろうけど(幻灯機渡したりはしてた)

 

燕九朗、おそらく徳甲一族内でダントツトップクラスに人を見る・本質を見通す力に長けてるから『彼の目に映る人々』を考えるのが最高に楽しいです。見通した上で彼のひねくれハートを経由した評価が出るところがめちゃくちゃ面白い。

 

『紡いだ糸』の先の話

凪左助を経由して得た『大将への興味』で探り入れてるところも面白くて好きです。目の前に垂れ下がってる『糸』をツンツン引っ張ってみてるみたいな感じがして。

結果的にこういう形で彼のことを知っていったからこそ、『オジサンに子供たちを預ける』って選択に繋がったわけだしね。

燕九朗、子供二人に対しては『模範的な人の親』からはかけ離れたような思考しか持てないけど、でもなんか冷たい感じは全然しなくて…

まあ本当にどうでも良いと思ってたらあんな根回ししないしな。凪左助に対する返事みたいな意味合いもあるけど。

 

燕九朗がオッサンとの糸を手繰って来なければやっぱりまつり&ルリオの運命は全然違っただろうなあ。その証拠というか例になる話を一つさせてください。

 

プレイ中の話ですが、私『昼子チルドレンVS昼子』を本当に本当に見てみたいと思っていたんですよね。

それこそ、クリア後に『これは姉弟が迷い込んだ夢の世界です!』ってテイで裏京都エキシビジョンマッチやるか?ってくらい見たかったです。でも結局しなかったし、しなくて良かったって思っています。

 

これは最後の戦いで『もうデータロードしたくない』って思えるほど緋ノ丸がキメにキメてくれたからっていうのも大きいけど、やっぱり姉弟本人たちのことを考えて「いや絶対行かねーわこいつら」って思えたことが決定打だったなあ。

だってまつり姉さんが自然に言ったんだもん。そっちには興味ないって

▲まつり姉さんがそう言ってる

 

その結論に行き着いた、自らの意思で居場所を決めたのは生き残った子供たちです。

だけど、燕九朗が何もせずにそうなったとは思えないので「燕九朗は凄いな…」って思ってしまいますね。

 

加えて、なんか燕九朗とまつりの関係が面白くて好きです。

燕九朗の『具体的に何かになれって望んだり押し付けたりしないけど、進める道は増やしといたわ』に対して、それを活用した上であくまで自らの我で道を選び、欲しいものを引き寄せようとするまつり姉さん……という図になっているのがたまらないんですよね。

あんまり似てはいないし、仲良し親子ってわけじゃないんだけど、燕九朗とまつり姉さんを見ていると本当に親子だな…って思うことが多いです。心火高いし

 

燕九朗と昼子

燕九朗の話をするに当たって触れておきたい人がもう一人います。昼子様ですね。

 

これ私の持論なんですけど、昼子様って相対する一族によって引き出せる面が全然違うのがめちゃくちゃ面白いと思っています。

例えば2周目羽出井の壺丸だったら『格が全然違う遥か上の存在』。その子である地平にとっては『マジでムカつくし最悪だし一切共感できないヤツ』みたいな…

私のプレイ一族にはいないけど、一族によっては昼子様のセンチメンタルな部分に触れたり、ある種の共感ができるような面が引き出されることもあるよね。

 

これって、対応一族によって昼子様に色んな属性が付与されてる訳じゃなくて大体全部『昼子様が本来持っていると思われるもの』だと思うんです。(一応R版や小説版の設定を採用するかどうかの設定の違い・細かい解釈の差異は当然あるけど、本質的な部分はあまり変わらないと私は思う)

そして『一族というライト』が彼女のどういう面を照らし映すのか…みたいな。
その角度では照らせない彼女の面は影になって見えないわけですよ。だから私は『一族と太照天昼子』の関係がかなり好きです。

 

燕九朗の話に戻るけど、『徳甲燕九朗が照らし出せる太照天昼子の面』っていうのも確実にあって、それは『メチャクチャ食えない女、マジで性格悪い。共感もできない。でも何となく考えてることや感じてることはお互い分かる』辺りだと思う。

(羽出井の地平と違うのは『考えてること何となく分かっちゃう』の差部分かな)

賢くて人の本質を見る目を持つ燕九朗、多分昼子が短い言葉で伝えたとしても大体意図理解できちゃう気がする。でも共感や同情はしないので『食えない女』という面から視点は動かないという。

 

燕九朗にとっちゃあ彼女の抱えてる重いものとか過去とか内面とか満ち足りないところとかマジでどうでも良いからな。一方の昼子様も燕九朗の事情とか腹の内とかそんなのはどうでも良いの。

でもお互いがお互いを『そういう風に認識してる』ことは『お互い分かってる』…そんなイメージです。この二人

 

 

上記の話を踏まえて徳甲世界のイツ花=昼子様、という前提の話なんですが、

燕九朗が天界から帰ってきた後、何も言わなくても『イツ花=昼子』って確信してそうなところ好き。

そして、燕九朗はイツ花に対して「あんた昼子でしょ」とか言ってない。だけどイツ花(昼子)は『ああこいつ気付いてんな』って分かってる、みたいな。

そんな二人が、『お互い分かってる』前提で『一族と小間使い』の会話してるところがマジで面白くて好きですね。この辺が正に『燕九朗が引き出せる太照天昼子像』だと思います。

 


次回(揚羽)▶︎4/8更新予定

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