1年越しの徳甲一族キャラ語り 第25回になります。
これ何?という方ははじめにを御覧ください。
目次
まつり-沿革
燕九朗と太照天昼子の子供
最高神の子
徳甲一族にとっても天界にとっても史上初となる『最高神の子』としてこの世に生を受けた娘は、期待通り…いや、期待以上の才覚と自覚の持ち主だった。
『最高の遺伝子・最強の力を与えられた者として、朱点童子を討つこと』
そのことに何の反発も無い。自らはその為に生み出され、その役割に適している。まだ幼くあどけない少女は、自らの使命に合理性を見出せる精神を生まれながらに宿していた。
少女が屋敷にやってきた時、父は意識なく床に伏していた。彼は天界最高神と波長が合う珍しい一族で、無理をして2人の子供をもうけた結果こうなったらしい。
父の寝顔を見る娘は、彼の行動にこれ以上ないほど得心していた。最強の遺伝子を得られる機会が希少であるなら、二度の交神はとても合理的な判断だと思ったからだ。こうして動けなくなるほど消耗する『不都合』を遥かに超える『実利』が、その判断にはある。
父が目を覚ました際に何度か言葉を交わし、少しばかり訓練も見てもらったが、予想通りとても理知的で能率的な人だった。まつりと名付けられた少女は、父を信頼のおける人物だと認識した。
そんな父がある日、知らない男を連れてきた。
話を聞くと、彼は一族と交友関係にある京の民で、父の代わりとなる『世話役』を依頼するつもりらしい。
その人…大将と呼称される男の所作は隙だらけで、戦闘技術に長けているわけではなさそうだ。かと言って、術や勉学にも明るくないらしい。能力を見込まれての抜擢では無さそうに思え、やや不可解だった。
しかし、この父のことだ。おそらくは何か意図があっての判断なのだろう。今のところ利になる点は見当たらないが、特に逆らう理由もない。無意味な反発は無駄でしかないと考え、まつりはこの男と行動を共にするようになった。
ひと月後にやってきたもう1人の『最高神の子』についても『世話役』の対象範囲であったのだが、彼…ルリオは大将に対して猛烈に反発していた。
まつりから見ると、その反発行為にかなり無駄な労力を割いているように見える。彼は何がしたいのだろうか?
命の優先順位
父や親世代が寿命を迎え、世代交代はつつがなく完了した。これからは予定通り、残った4人で朱点童子打倒を目指していくことになる。
一族を率いる長が『最も才のない者』…と言うのは妥当性が低いように思えた。
しかし、調べてみたところ『当主の指輪』は所有者が倒れると強制送還が発動するとか、譲渡により生命力を他者に移すなどの力を秘めているらしい。
隊長と言っても、一族のそれは多数を束ねるような役割とは全く異なる性質を持っている。だから、当主の指輪の可能性を考慮すると最も見込みのない人物がその役職に収まるというのは案外有りなのかもしれない。
春から夏に季節は移ろい、まつりは淡々と身を鍛え、技術を磨いた。高難度とされた術を次々習得しつつ、その総合力を最大限に発揮できる固有の技…『奥義』の開発にも着手している。
そんなある日、些細な騒動があった。どうやら、緋ノ丸や一番星の間に何らかの伝達不備が起こったことがきっかけらしい。仔細には関心がなかったが、橋渡しを任されたまつりは初めて一番星と二人きりで話をした。
その際、少し興味深い話を聞くことができた。
なんでも、一番星の中には彼なりの『命の優先順位』があり、その中でも彼自身を最下位に置いているのだとか。
仮に『犠牲もやむなし』という状況に陥った場合、最初に切り捨てられるべきは自分だ、というのが彼の主張だ。
まつりは考えた。彼の主張には、同意できる点とできない点がある。
優先順位を付けることには同意できる。それは咄嗟の判断を助けるからだ。
だが、その順番の決め方が独特で不可解すぎる。
一番星は『他者との繋がりが強い者』ほど上位に置いているようだが、朱点童子を倒す為に肝要なのは戦闘力と判断力であって、人間関係ではない。彼の優先基準には同意できない。
犠牲を出さねばならない、そのような判断が必要な窮地に陥った場合、まず最初に切り離すべきは長である緋ノ丸だ。
全体的に力量不足で特殊な技能も持たない彼の場合、仮に欠けても隊の損失は大きくない。当主の指輪の秘めた力のこともある。
彼一人を切れば、残る全員を生かせる可能性が高いと言えるだろう。
更にもう一人切らなければいけないとすれば、次はルリオだ。
彼は自分と同じ最高神の子で才能も十分にあるが、いかんせん反抗的で戦闘員として非常に扱いにくい。気質も能力に含めて考えるなら、彼は複数人での連携に不向きすぎるのだ。
単体での戦闘能力を参照しても、彼が得意で率先してやっていることは群がる低級鬼の除去。朱点童子という大物に対してどの程度通用するかは怪しいところでもある。
一方で絶対に切り落としてはいけない人材は自分。そして一番星だ。
自分は天界最高神の子で、才覚がある。戦にも鍛錬にも学習にも積極的で、成長や吸収も相応に早い。隊の補助にしても鬼に対する殲滅力にしても欠かせない万能の戦士である。
それだけでなく、最強の神の遺伝子を宿しているということが何より重要だ。この貴重な遺伝子を絶やすのは一族にとって大きな損失と言えるだろう。だからこそ、父も二人の子を残したのだ。
そして一番星 彼の体術は素晴らしい。目にも止まらぬ速さで敵の懐に潜り込み、正確に有効な打撃を入れ、鬼たちの足並みを崩す。それだけで優位になった戦いは数知れない。
術の覚えも良く、敵の攻撃のいなし方も巧みで、何よりそんな自らの役割に従順だ。
その身に宿す血についても、男神の中で最高位に位置する雷王獅子丸の血を持っている。血統的に言えばその子孫である緋ノ丸よりも近いほどだ。
一番星 彼はかなり重要な存在だ。
まつりは、一番星自身の発言からそんな気付きを得た。
変革
それから夏が過ぎ、秋が来た。一族の寿命と最盛期を考えるなら、決戦の時期は冬頃になるだろう。
鍛錬や術の勉強・奥義開発などはそろそろ仕上げを視野に入れていくことになる。まつりの開発した広範囲攻撃奥義は圧倒的な完成度を見せた。次に取り掛かるべきは隊員強化と回復の技だろうか。
強化や回復の奥義を創るのであれば、まず確実に類似効果の術効果は超えなくては意味がない。完成済みの攻撃奥義『花吹雪』も、あらゆる攻撃術を凌ぐものを目指し磨き上げたものだ。
強化であれば梵ピン、回復であれば壱与姫より効果が高く、現実的な奥義を考えるとするなら…
二人に範囲を絞り、一気に力を限界まで高めたり、あらゆる傷を癒す奥義はどうだろう。
これなら確実に完成させられるだろうし、既存の術よりも効果が高い。いざと言う時生存優先度が高い者を生かすためにも使えるはずだ。
余力があれば3人、4人と効果範囲を広げる研究をしても良いが、まずは確実な完成を目指そう。まつりはそう考えた。
そんな中、当主が全員を集めて一つの提案をした。なんでも、我々は現状意識や目的がバラバラなので『全員が生き残る戦いをする』という意思で統一したいとのことだ。
そのため、まつりが開発中である『効果範囲二名の超強化奥義・超回復奥義』は全員に適用できるものにしてくれ、などという非現実的な要請を出してきた。
まつりは正直呆れた。目の前にいる長髪の男は生まれ持った資質こそ乏しいが、愚かではないと考えていたから。
当然『全員生還』は最良の結果だ。まつりとて、犠牲者を出す前提で考えているわけでは無い。
だが現実的な話、全員生還などというものに執着する意味は薄い。寧ろ、それに固執した結果いざという時の判断力を鈍らせてしまう方が危険だ。
彼も知っているだろう。我々の先祖が未知の敵に挑んだ結果『全滅』という末路を辿った歴史を。
そして奥義の件。
隊全員適用の超強化・超回復奥義を創れ?
過剰な力を求めた結果、何の成果も得られなかったらどうするつもりなのだろうか。
この男は本気でそんなことを要求しているのか?もう少し現実的に物事を考え、他者に望む方の人間だと思っていたが、見込み違いだったようだ。
人に求めるなら、少なくとも自らが可能性を示し、証明するべきだ。その口で豪語した『どんな状況でも最大威力を出せる技』や『一切の攻撃を通さない盾』とやらをまずは見せてみろ、と思う。
そう頭で考えた時、彼は言った。「武装してついてきてほしい」「3人同時に、本気で俺を攻撃してくれ」
…気でも触れたのかと思った。
だが、今の彼は明らかに隊長として不適格だ。死なないにせよ再起不能になる程度に叩きのめすことができれば、その方が合理的な計画を立てやすいかもしれない。
まつりは冷ややかに、淡々と考えた。しかし僅かながら沸々と何かが湧き上がるような感覚でもあった。
…彼が我々に“何か”力を提示しようとしているのであれば、全力をぶつけなければその真価を測ることはできない。
どちらにしても本気を出すべきだ。まつりはその場にいた誰よりも力強く、そして正確に扇を振るった。
武闘の専門職よりは劣るが、豊富な術技の才によって強化された特殊な衝撃波だ。それをルリオの射撃と合わせれば、そこらの鬼なら塵も残らない程度の爆発力にはなるだろう。
それだけではない。まつりが精密に操作した衝撃波は、緋ノ丸の背後にあった岩壁にも向かっていた。巨大な岩の塊が彼の頭上に迫る。まつりがそのように仕向けたのだ。
…緋ノ丸は、立っていた。
原理は分からないが、全ての攻撃を受け切り、そして不意に背後から落下してきた岩を受けても潰れることなく立っていた。
まつりは少し驚いた。確かに、本当にこのような奥義を実用化可能なところまで創り上げていたのであれば、あの大口にも納得できる。
しかし、そのような力を手に入れていたとしても、理想を求める意味はあるのだろうか。まつりは問うた。「何故、無駄になるかもしれない努力をしてまで、理想の結果に固執するのですか?」
その問いに対し、緋ノ丸はまるで初めから用意していたかのように答えた。
犠牲を出しても朱点童子を討ちさえすれば良いというのは、『戦いの中で生きること』しか見えていないんじゃないか、と。
緋ノ丸はその戦が終わった世界で生きるために戦っている。故に、その世界を構成する人員が欠けている状態は嫌だと。
だから強くなるのだ、と。
その目は力強く、一切逸らすことなく真っ直ぐに、まつりの目に向けられていた。
まつりは負けた。本当で殺しかねないほどの本気を出して尚彼は立っていたのだから、明白だった。
それでも食い下がる程まつりは物分かりが悪いわけではない。一旦は彼の言い分を飲み、創作中の奥義を練り直すことにした。
効果が同じでも適用範囲が大きくなるということは……構築を見直す必要があるし、自らの消耗を抑えなければ使い物にならないだろう。
実戦で使える程完成度を高められる保証は無い。初めはそう考えていた。
しかし、研究を重ねるごとに一つの理論を組み立てれば次の可能性が、それを越えれば更なる可能性が見え、次から次へと進化して果てが見えない……こんな感覚は初めてだ。
気付くと、まつりの新奥義は完成していた。
一つは、味方と識別した者の傷や消耗を全て回復させる奥義。
もう一つは、同じく味方の『攻撃に関する能力』を一時的に最大まで押し上げる奥義。
数ヶ月前の自分が『現実味の無いもの』とし、『追い求めるのは不確実で不合理』と断じた技が、今こうして完成している。
これは、過去の自分が間違いであったという事実の裏付けに他ならなかった。
自分は、自らの力量を低く見積り、完全に見誤っていたのだ。
こうなると、緋ノ丸の意向を肯定する他ないだろう。
自分の判断は誤りで、彼の判断が正しかったのだから。
徳甲まつりは、徳甲緋ノ丸のことを認めた。
そして、彼の言った言葉を思い出す。
『戦が終わった後の世界』
まつりにとっては全く想定したことがなかったものだ。何故なら我々は朱点童子を倒すために生み出され、その為に力や技を鍛え磨いているのだから。それがまつりの『目的』だったから。
ゆえに『戦が終わった後の世界』に特に目的とするものは無い。…が
仮に生存し呪いが解ければ、その世界を生きることになるのは確定している。そうなると、役目を終えた武器のように蔵に仕舞われる、ということはできないのだ。我々は生き物だから。
目的があるからこそ、その日、更に未来の行動を決め、活動することができる。ならばやはり、『後の世界』にも目的は必要だし、その世界の構成要素となる一族関係者や人々・住居を置く京の町・活動源になる食などといった環境の存続は重要だと思えた。
非合理的なものは好まない。理解できない情の類や、漠然とした理想や空想など、まつりの中には響かない。
だが、“これ”なら理解できるし、納得できる。
そうやって状況を整理していくと…以前の考えに基づいても、現在の考えに基づいても、まつりにとっての『重要度の高さ』が変わらない存在が一つだけあった。
決戦、そして
完成した奥義を更に磨き、隊全員の力量も底上げが成された。
見込み通り最盛期となる冬に決戦の日取りが決まる。
普段と同じように淡々と準備をして、調子を整えていく。
この戦いは結果が全てだ。朱点童子側に結果が出るか、我々に結果が出るか。それだけだと思う。
ただ、負ける気はあまりしなかったけれど。
決戦の時、不気味に胎動する地盤、悍ましい気、そして朱点童子の狂った言動……それらに惑わされることなく、まつりは扇をふるい、舞い踊る。
そこには天下無双の戦士が“二人も”いた。
片や常に先手を打ち、攻撃・補助・回復の全てを隙なく的確にこなす踊り屋。
片や無敵の陣で狂気の光を全て無効化する槍使い。
負けるはずがない。
朱点童子打倒。…まつりにとっては最早当然の結末だった。
しかし、直後にやや予想外のことが起きた。
一番星が崩落する塔から身を投げたのだ。
彼は緋ノ丸の手をはねのけ、そのまま後方にゆらりと倒れるように姿を消した。何故そのような行動を取ったのか、見当もつかない。
だがまつりは珍しく、直感的に思った。彼を追いかけねば、捕まえねばと。そうしなくては彼は早々に死ぬことになる。
緋ノ丸たち二人を残して、彼らがこの状況を打破するための手立てがあるわけではない。そこまで思考する時間はなかった。
ただ、あれだけの理想を語り、力を手に入れ実現させた緋ノ丸ならばあるいは、この状況を打開するかもしれない。
結論を出さずに行動に移したのは初めてだった。
まつりは奈落へ飛び出し、扇の推進力による加速であっという間に一番星に追いつく。そして、これまでの戦いや鍛錬・奥義開発を共にしてきた“武器”を躊躇なく投げ棄て、全身で彼に組み付いた。
守りの術をかけてはみたが、崩落する塔や地獄の大小様々な破片が、混乱の中阿鼻叫喚状態の鬼がまつりの肉体を傷付ける。
地獄が広がっていたその空間は異界のようでもあり、果てがあるのかも分からない。そんな長い距離を落ちながら、これまでに体験したことのない痛みと疲労が倍々に蓄積され、まつりの心身を蝕んでいく。
しかし、一番星を抱く両腕の力だけは決して緩めることはなかった。
どれくらいの時間が過ぎた頃だろう、まつりの前に光る鳥のような何かが現れた。地獄の鬼たちとは違う、神に近い何かだ。
その“何か”が、まつりに問いかけた。
「その子はあなたの愛する人なのかしら?」
まつりは愛という情について明るくない。定義は知っているが、あまり理解できないものだった。自分が身を呈して彼を守る姿は、愛に見えるのだろうか。
『愛については分かりかねる。だが、彼は死なせてはいけない人だ』
現状出せる回答はこれに尽きる。彼は、自分の世界に必要な人だ。
それを聞いた何者かは、何処かに消えていった。
そして、同じ方向から眩い光が差した。
巨大な龍が、二体。
その背には緋ノ丸が乗っていた。経緯は不明だが、緋ノ丸が龍の助けを借りて、私たちを助けにきた。
まつりはつくづく思う。奴は予想できない成果を出す男だと。
新しい世界へ
龍の背で一度意識を戻したが、その後また長い間昏睡していたらしい。それほど消耗が激しかったのだろう。
目を覚ますと、畳の上にいた。
常日頃から我々の身を案じている大将だけでなく、ルリオもまつりの目覚めを待っていたらしい。珍しくこともあるものだ。
状況確認をしようとした瞬間、それを遮り大将が思いっきりまつりとルリオを抱擁した。そのまま強く強く抱き締める。
ルリオもややあって自らの腕をまつりの背に回してきた。体勢の関係上、彼らの顔は見えない。
真冬だというのに彼らの体温はかなり高く、その熱を直の感じることができた。まつりの世界を構成する要素たちには温度があり、脈動がある。
人の身体とはそういうものだ。そう知っていたはずだが、この時初めて知ったような気もした。
一番星は随分と様変わりしていたが、それほど違和感はないように思えた。寧ろ、彼の印象から考えると此方の方が自然な気もする。
まつりが距離を詰めると、彼はその倍遠ざかっていく。しかし、まつりはそんな彼を追いかけたいと強く感じていた。
この感覚は何なのか。その解を出すことが、一先ずのまつりの『目的』だ。
徳甲まつりは、躊躇うことなく新しい世界に足を踏み入れた。
まつりについて
『まつり目線の思考』なんて本当に開けっ広げにする機会が無かったのでめちゃくちゃ楽しいな。燕九朗と同じくらい楽しかった(そして一人で盛り上がりすぎて長くなる)
まつりの場合、燕九朗と違って内面が割とハッキリしてるのであんまり二次創作感はないけどね。
まつりの思考傾向・ルリオへの認識
まつりは『こういう人だからこの時はこういう基準で行動してたし、それがその後の判断に繋がってて…』っていうのが綺麗な図式のように繋がっていく人だと思います。
一番星に目をつけたのは彼が優秀な戦士だからだし、緋ノ丸を認めたのは彼が力を示したからだし、合理性があると判断した物事に対して意地を張ることはないし、自ら答えを出すために行動する……みたいな。
基本的なまつりの言動傾向として『自分が不利益を被る/不合理である場合を除き、無駄な抵抗はしない』っていうのがあるように思います。
燕九朗が謎のおっさんを世話係として連れてきたのも、最初こそ『父が連れてきたなら何かすごい人なのかな』と思ってたけど、多分すぐ『別に特別な力とかは持ってない』って判断したと思うんだよね。
微妙に思ってたのと違ったけど特に反抗したりしなかったのは、それが『無意味なこと』だから。
おっさんは無力だけど一族の害になることはしないし、基本的に不利益な存在ではない(それはおっさんが一生懸命慣れない気を回してたからだけど)。抵抗する理由はない、という。
だからギャーギャー反抗してたルリオが本当に不思議だっただろうなあ。多分まつりにとって誰よりも不可解で謎な存在はルリオだと思う。自分と同じ親から生まれてるのに、不合理でよく分からないことにいつも無駄な労力を使ってる変人。そういう印象だろうなあ。
当然ながらルリオが一番理解できないのはまつりですよね。ルリオからすると『部外者の存在を全く気にしてない・実父が死んでも淡々としてる』そんなまつりは意味不明にも程があるし、どういう思考回路で生きてんだ!?って感じ
マジでこの姉弟価値基準が違いすぎて面白い。
でもそんな『価値基準が全然違う』『最後までその基準は変わらなかった』まつりとルリオが、決戦前のあの瞬間だけは『おっさん含む家や周囲の関係は大事だ』で合致してたのがめちゃくちゃ好きです。
同調したわけでも理解できたわけでもない、ただ、たまたま2本の道が『合流しただけ』って感じかなあ。2人の価値観は全く違う・不理解のままなので、きっとこれから先もお互い相容れないことでの衝突はあるだろうけど。
まあ、まつりはかなり学習してるんで『共感』はできずとも『傾向・基準』は掴めてきそう。なので初期のような衝突は起こりにくいと思います。
つくづくまつりはルリオのこと『弟』だと思ってないよなあ。いや、俗柄は何?と聞かれたら『弟』って答えるんだろうけど、気持ち的な話。
『血が近いものに対して感じる理由の分からない親愛の情』みたいなのが本当に無いんだと思う。だから中盤の『命の優先度』の件で普通にルリオを下から3/4番目に置いちゃったりもする。
まつりからルリオに対する認識で一番近いのは『同じ両親から生まれた他人』なんだろうなあ。私は結構好きですけどねこの関係 リアルにもあることだろうし
まつりの意思・緋ノ丸との関係
まつり姉さんは合理性の極みみたいな人だし、感情全然出ないし、ロボットみたいな発言するけど、決して意思が『無い』わけではないのが好きですね。
寧ろ全ては『彼女の中に確固とした理屈があるからこそ』のものなので、最終世代の中でも1・2を争う強自我の持ち主だと思う。(自我頂上決戦の相手は緋ノ丸)
所謂『これが…心…?』系の無感情キャラじゃない、ってところが本当にまつり姉さんのチャーミングなところなんだよな。他の人と基準や構え方が違うだけで『心』はしっかり持っている。
緋ノ丸に対しても『長だから従う』なんて気持ちは1ミリもなくて、『自分が従うに値する実力を持ってると認めた場合は従う』っていうのがマジでクソ強自我だと思います。これは心火歴代最強 燕九朗の娘
ただ、こういう強固な意思と確固とした行動基準を持っているからと言っても決して『精神的に大人』というわけでもないという。
『頑固で分からずや』…なのかな?『一度言ったことを絶対変えない』じゃなくて『自分が正しいと判断してることは絶対曲げない』って感じなので適切な言葉かは微妙なんだけど。
とにかく『他人と折り合いを付けたりすること』が中々できないんだよね。そういうところはまつり姉さんの良いところでもあり、未熟なところでもあると思う。
そんな彼女と『仲間として足並み揃えて歩む』ができたのはやっぱり緋ノ丸が頑張ったからでした。
まつりの意思を曲げてもらう・妥協点を見つけて折り合いをつけるって方向じゃなくて『最強になって共闘に値する存在になった』っていう超パワー系の足並み揃えだったけど
マラソンで爆走してるまつりに速度を緩めてもらうんじゃなくて、めちゃくちゃ速度上げて追いついて並走したみたいな。まつり姉さんは一切アクセル緩めてないからな。
というか緋ノ丸の速度アップが異常すぎてまつり姉さんが一瞬抜かされた後、もう一段ギア上げて速度アップしてた感あった。この二人やばいんだよな
二人とも奥義がゲキアツなんですよね…。槍使い・踊り屋それぞれの最大出力奥義を極めて、最終決戦でぶちかましたのがこの二人だった。
拳法家・大筒士にも最強出力の奥義あるけど(百裂拳・鉄砲水)、ホッシーとルリオは素質的に創作できなかった…というのも、緋ノ丸&まつりの強さを際立たせているように思います。
緋ノ丸とのアクセルギア全開の並走っぷりを見てると、やっぱりまつり姉さんって超ヒロイックな存在だなあと思います。見た目は紅一点ヒロイン風だけど
徳甲一族の大ヒーロー・緋ノ丸と唯一並び立てる人なんですよまつり姉さんは。それはもうヒーローじゃないか
例え話ばっかでアレなんですけど、緋ノ丸を主人公とするならまつり姉さんは最強のライバルキャラだし、利害が一致することで共闘関係になり、一人では倒せない最強のラスボスをタッグでぶちのめしに行くみたいな、そんなイメージあります。
緋ノ丸とまつり姉さんの関係本当に好きですね。徳甲一族だから彼らの間にはホッシーがいるわけだけど、もし彼がいない最強バディヒーロー世界線があったとしても『絶対にカップルや友達にはならないだろうな』って感じが好き。
友達ですら無いのかよと言われると「うーん」ってなっちゃうんだけど、ピンとは来ないんだよなぁ。友達では無いよな…
カップルでも友達でもない、徳甲世界なら別にバディってわけでもない、だけど『最強のふたり』であり『信頼し合っている仲』…と言うのがこの二人のイメージです。
なんかほんと関係性に名前つけにくいタイプの関係語ってると鼻息荒く前のめりになってしまうな。緋ノ丸とまつり姉さんってそうなんすよ…(強く拳を握りながら)
まつりの感情・一番星さん
不明瞭な“何か”
『これが…感情…?』というタイプではないと書いたけど、まつり姉さんからホッシーに対する感情については『なんとなく不明瞭でハッキリしないもの』ではあると思います。
彼の存在を気にするようになって、執着するようになった切欠はあくまで合理的な理由(一番星が一番強い拳法家である)なんだけど、その後芽生えた『合理的判断だけでは説明できないもの』が彼女の中でも結構謎っていうか。
その正体は『親愛の情』かもしれないし、『他の欲に関する何か』かもしれない。ここは私の中でもそこまでハッキリさせてないですが、きっとこれからまつり姉さんが突き止めていくものなのでしょう。
とにかく色々なことを濁そうとしてるホッシーに対して、まつり姉さんは全部に解を出してハッキリさせようとしてる。なのでホッシーが幾ら避けようとまつり姉さんは接触をやめないんですよね。
本当に難儀な自我強者に好かれがちだと思う。徳甲一番星
まつりにとっての一番星像
まつり目線の徳甲一番星って、別に『明るい元気スター男』では無かっただろうなあ。だから彼女だけはエピローグ後の一番星を見ても平然としてそう(ルリオや大将はめっちゃ驚いたはず)
ホッシーは最初こそまつりに対してもキラキラ元気兄ちゃんムーブしてた(他の人と同じように)けど、彼女がそういう気遣いを求めていないこと&その接し方でコミュニケーションが円滑に進むわけじゃ無いことに気付いてからは割とローテンションで接してた印象があるんですよね。
ホッシーは自分の行動について自分でスイッチを操作できるタイプでは無いので、これは無意識に近いと思うけど。
リアルでも普通にあるじゃないですか、相手によってノリやテンションが切り替わるみたいなの。(寧ろ誰に対しても一定なまつり姉さんの方がおかしいんだけど)
まつり目線の徳甲一番星って『タイマンだと割とテンション低くてややぶっきらぼう、引き気味でちょっと逃げ腰』という人物像だったんじゃないかなあと。
故にエピローグで暗くなった一番星を見ても、あまりギャップを感じなかった人なんだと思います。
『呼び名』の話
私は緋ノ丸が徳甲一番星のことを『ホッシー』というあだ名で呼んでいることが好きです。
一番星が『一番星』であることを投げ出しても変わらず使えるような、『緋ノ丸にとっての彼』がこれ以上ないほど出てる呼び名だなあと思うので
(勿論緋ノ丸があだ名で呼んでいる件にそんな意図はないけど。)
ルリオは『星野郎』って呼ぶことが多くて、大将は…直接呼びかけた場面思い浮かばないな。多分『お前さん』みたいな呼び方してる気がする。
音数多いことも相まって徳甲一番星を『一番星』って呼んでる人は意外と少ないんだよね。多分親世代とまつり姉さんだけなんじゃないか?
『緋ノ丸→一番星があだ名呼びなの好き』と書きましたが、一方でまつり姉さんが彼のことを変わらず『一番星さん』ってフルで呼んでるのもめちゃくちゃ好きなんですよね…。
彼女の中で彼は変わらず『一番星さん』だし、その言葉に対してセンチメンタルなものも一切感じていないと言うか、名前のことを識別記号以上のものと思ってなさそう。
緋ノ丸→ホッシーの『変わらなさ』も、まつり→一番星さんの『変わらなさ』も、どっちも違ってどっちも良い 好きです。
余談・裏話・小ネタなど
まつり姉さんって心情描写する機会はあまり無いものの『こういうこと考えてるんだろうな』はけっこうハッキリしていたので、それ系の裏話が割と思いつきますね。
①岩壁崩しのまつり
視点あらすじ内でも触れたけど、緋ノ丸の無敵陣披露マンガ内で崩れてきた岩壁、あれは偶然ではなくまつり姉さんの故意です。
▲一人だけやたら冷静なまつり姉さん
『本気で殺すくらいじゃないと力は測れない→不意打ちの大落石くらいは必要でしょ』…というのが合理的?な理由ですが、正直『緋ノ丸が大言壮語かまして理想をべらべら語って、しかもそれをまつりにも要求してきた』ことにちょっとムカついてた、のもあるんだろうなあ。
『ムカつく』と言っても普通の感情表現みたいに怒りを露わにしたりイライラが態度に出たりはしないんだけど。
唯一まつり姉さんが漏らした「は?」好き
不意打ち岩壁崩しで本気で殺しにかかってたとか、命の優先順位で弟をめっちゃ低位に入れてたとか、この辺がもしもルリオに知られてたらガチギレ絶縁レベルの人でなし行為だったかもしれないね。
もしかしたら緋ノ丸は『あの崩れてきた岩壁はもしかして…』って思ってるかもしれないけど、多分他の人には言わないしまつり姉さんを責めることも無いんだろうな。
あの頃の緋ノ丸は『死ぬか、強くなるか』みたいな感じだったから、本気で殺しにくるようなやり方は寧ろ望むところだっただろうし。
当然、それはたまたま対象が自分だったから・たまたま望むところだったからってだけで、まつり姉さんのそういう面が他者に向きそうになってたら全力で止めると思う。やっぱ緋ノ丸とまつり姉さんの感じ好きだな
②句読点
これはふんわり裏設定と言うか、特に明言してなかったルールみたいなものなんですが、まつり姉さんの台詞は句読点があります。
他のキャラの場合読点(、)はあるけど、句点(。)はつけてないと思います。(うっかり付けてたらごめん 合計1700ページあるので)
まつり姉さん、淡々と抑揚なく話すイメージなので『。』付きの台詞合いそうだな~って。そんな理由で彼女だけ句点付きの台詞を喋ってます。
ただ、例外として偶に句点無い台詞があって、それに明確な基準は無いんだけど『ちょっと感情入ってそうな台詞は句点なし』なイメージでやってたりしましたね。
別に気付かれなくても良い、自分がニヤニヤできるだけの地味な表記設定楽しいです。1年以上経ったからこれも書いちゃう。
③食いキャラ
まつり姉さんの特徴?として『めっちゃ飯を食う』があるんだけど、グルメ・美食家というよりはとにかく『食べるのが好き』ってイメージです。
なんで好きかっていうと『活動のためのエネルギー補給に関する欲求に素直』だからなのかなと。なので、食と同じくらい睡眠も好きだと思います。
目的はあくまでエネルギー補給なので必要以上の過食はしないし寝坊もしないタイプですね。
一族の運動量凄そうだし、エネルギー補給は大事だよね。まつり姉さんの強さの秘訣は寝食にある…!のかもしれない。
まつり姉さんが無機質無表情小柄キャラの割にそこそこ肉付き良くて曲線的なのはこういう理由だったり(勿論無駄な肉はないけど)。健康的なんだよな、まつり姉さん
プロポーションの話になったのでついでに言うと、眉毛太いのも目力に加算されて意思強そうでまつり姉さんらしい人相だなって思います。
眉毛太めなのは一応顔グラ準拠ではありますが(太眉ってほどではないけどキレイ系の顔に比べるとちょっと眉毛太い女17)
瞳孔かっぴらいてるところとかは全然顔グラに準拠してないけど。
④音に形がある
これは別に裏話があるとかじゃないんですけど、まつり姉さんが『音に形はある』って言ってるの好きです。
大将はじめおおよその人は『歌や音に形はない(だから伝える中で変わっていったり消えたりする)』って思っていて、これは俺屍ファンタジー世界とは言え平安京の庶民なので「そうなるよなー」って感じなんだけど。
でもなんかまつり姉さんは『音の形』って概念を理屈で捉えそうな雰囲気あるよな…みたいな。音符や楽譜って概念が存在しなくても、それに近いものを認識してそうなイメージです。私自身音楽については知識がないのでふんわりしたアレで申し訳ないんだけど
まつり姉さんの周囲関係大体全部アツいので終始鼻息めちゃくちゃ荒くなってしまった 以上です。
次回(ルリオ)▶︎4/24更新予定