徳甲一族 英霊の歌

マンガ描いたりしつつ俺屍Rをじっくりプレイする記録

一族あと語り / 08 葉菜子

1年越しの徳甲一族キャラ語り 第8回になります。
これ何?という方ははじめにを御覧ください。

葉菜子-沿革

 

火輪様は太陽だった

 

徳甲葉菜子は火輪様に出会う前のことをハッキリとは覚えていない。

なんだかとても居心地が悪くて、自分の存在は異物で、そしていつも泣いていたような気がするだけだ。逃げるように。涙で視界にもやをかけ、見たくないものが見えないように。

父親である竜ノ助は優しかった。彼女と形こそ違うが、人にはない異形のモノを頭に生やしていた。“同じ”だった。

だけれど、葉菜子は知っていた。父は近いうちにいなくなってしまうのだ。葉菜子は異物になる。一族にとっても、京の町の人々にとっても、葉菜子は異形で、異物で、一人になって…。それがとても、とても恐ろしくて、涙が枯れることは無かった。

その頃のことはハッキリとは覚えていない。当時の記憶は塗り潰されたようにぼんやりしていているから。記憶を塗り潰してくれる程の存在に出会ったから。

それこそが火輪様だ。

 

だから、葉菜子には何も恐ろしいことはなかった。

大江山の朱い鬼に挑むことも、呪いが解けないことも、未知の迷宮に挑むことも。火輪様が共にいてくださるなら

 

そうやって葉菜子は生きてきた。火輪様に全てを委ね、あの人だけを見つめて。

何もかもを恐れ、ただ泣いているだけだった葉菜子はもうどこにもいなかった。

…はずだった

 

不意に“あの頃の彼女”が帰ってきた。

それは奥義の会得によって扱いきれない程の大きな力を放った時だろうか、病であると診断された時だろうか、呪いが進行したせいだろうか。もしくはその全てかもしれない

彼女の身体が、火輪様でも自身でもない何かに侵食されていた。その感触は、彼女の存在を異物だった頃に引き戻そうとする。怖い 怖い 怖い

怖い

息が苦しい

胸が痛い

 

全てが恐ろしい

 

自分が自分じゃ無いものに侵されていく。あの人に手を握っていてもらわないと、体がどこかへ飛んでいきそうだ…

 

 

 

葉菜子が恐れ苦しむ時、その存在は側にいてくれた。

 

震える手が握られ、苦しみだけを吐き続ける唇が塞がれる。

葉菜子とは何もかも違う、力強くて熱い感触だ。己を支配してくれる、己を埋め尽くしてくれる強い光だ。

葉菜子は葉菜子のものでも、得体の知れない何かのものでもない。火輪様のものなのだ…

 

そうして彼女はこの世界の誰よりも幸福に包まれながら、瞼を閉じた。

 


葉菜子について

葉菜子についてはアヅキたちほど『終わったからこそ言えること』って無いように思います。けっこうハッキリした人ではあるし、描きたいことはあらかた描けたかなあ。

火輪様が大好き

臆病で泣き虫で、でもそんな自分を責めることも他者を恨むことも知らない少女。

『誰かに依存する』という『己の保ち方』を躊躇なく選べるのが肝である…みたいなイメージです。火輪様が大好き

 

そうだなあ、特定の誰かにどっぷり入れ込んだり惚れ込んだりする人が多かった徳甲一族ですが、彼女もその一人でしたね。

大也の項でも『彼がアヅキ殿に入れ込む理由や感情・その種』について触れてきたので、徳甲一族を大雑把に大別した時に『このカテゴリ』に入る人たちについてはその辺りを語っていきたいかも。

 

葉菜子は何もかも火輪の言いなりで、火輪にセクハラされるのも『自分があの人のものになってることを感じられて嬉しい』とか言っちゃう人。

それくらい火輪のことが世界で一番好きなわけだけど、『火輪のオンリーワンになりたい願望』とかはガチで1ミリも無いっていうのが個人的に重要ポイントです。

葉菜子は火輪という神を崇め敬い信じることで生きている信者だし、彼女の根底にあるのは孤独への恐怖なので『火輪大好き仲間は寧ろ超絶大歓迎である』っていうのが葉菜子らしくてめちゃくちゃ好きなところ。

火輪様帝国は多妻制だからね。嫁仲間(?)がいることも気にしないし火輪様内ランクとかも一切意識しない葉菜子、なんて火輪様と相性が良いんだ…(ちなみに火輪はランクとかつけないです。全部等しく火輪様のものなので)(銀杏の意思は一旦置いておいて)

・火輪が『全部自分のもの』だと思ってる傲慢博愛主義者であること⇔葉菜子が『沢山のうちの一人で良い』タイプの愛重い信者であること

・火輪が『どんな状況であろうが、どう思われようが、一切折れずに変わらずに邁進できる強い精神の持ち主』であること⇔葉菜子が相手を神視しているところ

この辺りの特性が余りにも噛み合いすぎている。

最後病に侵されて、遺言も悲壮感あった葉菜子だけど、それでも火輪の存在があったお陰で『笑顔で逝ける最期』を描くに至ったこともすごい。

思い返すと『本当によく同世代で出会ったなこいつら…』って思うこと多いですね。

 

葉菜子の本質

でも、例えば火輪と葉菜子がそれぞれ違う世代だったとしても、この二人って本質的な部分は全く変わらないんだろうな…と思うこともあります。

火輪はどの世代を率いても誰より傍若無人でやりたい放題しているんだろうなあ。雷丸のケツを蹴り飛ばし、眉間に皺寄せて難しく考える血潮や凪左助をチョップし、緋ノ丸の長身を物見櫓扱いして乗り物にしたりしてそう。どこにいてもきっと火輪は火輪してるはず

 

『火輪はどの世代に入れても火輪だろうな〜』というイメージは多分伝わるだろうな…と思うんですが、実は葉菜子も同じような気がするんですよね。

葉菜子の依存信者気質って相手が火輪でなくても、一度でも『自分を受け入れてくれる神だ』と思ったら発動するイメージあります。

ただ、依存相手認定された人によって反応が違う・葉菜子に求めるもの・結末が変わるだけというか。

たとえば平凡主人公のような気質の人間が取り憑かれた場合は、彼女の依存や信仰の重さと強さが段々恐怖に変わっていく…みたいな感じになってたかもしれない。

たとえば下心で彼女に優しいフリをして取り込んだ男がいたら、最初は『俺のことが大好きで一途で美人でおっぱい大きい彼女ヤッター!』ってなるけど、最終的に精神やらなんやらを全部搾り取られるのは男くんの方になるかもしれない。

俗っぽい言い方をすれば、視点によってヤンデレ的な存在に化ける可能性があるっていう話ですね。葉菜子は加害タイプでは無いけど

 

誰が相手でも、何か一つきっかけがあって一度神認定されたらその後どれだけキツく当たっても好意的解釈をして付き纏ってくる感じになりそうなんだよな。徐々に押し潰されそうな感じの重荷になっていくというか 葉菜子

そういうところがなんというか、絶妙に『都合の良い女』じゃない…ってイメージです。ハンパな気持ちで行くと逆に食われるというか

葉菜子って一回入り込むと都合の良いものしか見えなくなるタイプだと思うので、一度相手を信仰したら無敵って感じの人すぎるんだよね。正直相手が火輪じゃなくてもああいう感じになろうると。

葉菜子は臆病で泣き虫であるが故に『それらの不安を取り払ってくれる相手』を絶対求めるから。

 

葉菜子って本当に美人系の妖怪のそれに質が近いんだよな。依存先を探して、取り憑いて、あとは盲目に尽くして気付いた時にはズブズブになってる感じの…

取り憑くって表現になっちゃうんだよね葉菜子。火輪が一歩遅ければ(火輪が来る前に竜ノ助が死んだりしてたら)銀杏に憑いてた可能性は十分あったと思う。

 

葉菜子ってぶっちゃけると『依存する相手は誰でも良い』タイプなんじゃ無いかなあって思うんですよねえ。

これは葉菜子自身が『誰でも良い』と考えて動いてるわけじゃなくて、本人にもその自覚はないけど。メタ目線だから見える・言えることですね。

 

葉菜子の運命の人

ただここからが重要二重丸赤線なんですが、そんな彼女を本気で受け止められる、100%許容できるのは火輪だけなんですよ!!だから葉菜子と火輪の巡り合わせはすごいのだ

葉菜子はどの時空で誰と出会っても、いずれは良い具合に認識を歪めて信仰対象を見つけてズブズブの依存関係に持ち込む可能性がある。

だけど、最期に彼女の手と唇を取って、彼女が一番欲しい言葉を本気でぶん投げられるのはきっと火輪だけなんだと思います。

葉菜子っていうキャラクターの性質、マジでバッドっぽいエンドorメリバ製造機に見えるし、オタク心で言うとそのルートはそれで面白そうではあるんだけど…彼女をトゥルーエンド方向にぶん投げられるのは火輪様だけ……なんだよなあ…(腕組み)

 

俺屍のテーマは割とどうでもいい

葉菜子って短命の一族・鬼朱点打倒世代でありつつ、これらの要素がほとんどキャラクター性に影響を与えてないですね。

俺屍らしい要素といえば『ツノ生えてる、ちょっと異形な子』であることくらいだろうか。一応彼女が怖がりになった原因は俺屍固有のものではあるけど、もっと本質的な部分で言うと…と言うかですね。

 

俺屍テーマ的に重要度が非常に高い『一族の過去や未来、子供のこと』とかも全然気にかけてないし(娘である笹生が笹生で良かったな!)、『生きる・死ぬ・託す』的な要素皆無な人すぎるんだよな。

葉菜子は本当に俺屍のテーマや本筋からは外れたところで生きていたなあ…と思います。

決して強くはないけど、弱いと言って良いのか迷うところがすごく葉菜子だなあ


余談ですが、あと語りの書き出しは『◯◯と△△の子供』からにしようと思っていたのに素で忘れてた。葉菜子らしいしまあこれでもいいか…?

 

次回(銀杏)▶︎3/2更新予定

© 2024 徳甲一族 英霊の歌

テーマの著者 Anders Norén